退職金の前払
社員から退職金を前払いして欲しいという要望があった場合、どのように扱われるでしょうか?
退職金の前払いについては、前払退職金と前借退職金と一般的に2通りの考え方があります。
① 前払退職金
前払退職金は、今現在退職したと仮定して金額を算出し、その算出金額を上限に給与又は賞与として支給するという方法です。
つまり、将来、退職時に受け取る分を在籍中でありながら前倒しで受け取るということになり、在籍中に会社から一部支給される何がしかの報酬(給与)として取り扱われることになります。
この場合の受取額は、退職所得ではなく、給与所得となり社会保険や課税の対象になります。
役員が対象の場合、定期同額給与に反すると、法人税法上は損金に認められず、否認されてしまいます。
② 前借退職金
前借退職金は、本人と会社が金銭貸借契約を締結して、将来、退職する際に受給する退職金額の一部を前借として本人に支給し、将来、退職する際の退職金で前借分を相殺するという方法です。
この場合の前借分の金額については、現在、退職したとして算出した退職金額を上限に設定することが一般的です。
この取扱いは、あくまでも退職金の前借ですので会社からの借入金ということになり、将来の退職時に前借分を返済するということになります。
この場合の受取額は、給与所得ではなく借入金ですので、課税や社会保険の対象にはなりません。
 
いずれの場合も、支払った時点では、退職金としての取扱いにはなりません。
退職金であれば、分離課税で、しかも優遇措置がとられていますし、社会保険料も控除されません。
税金・社会保険の点だけを考えると前払退職金制度は避けるべきですが、終身雇用の時代ではありませんし、ライフプランの多様化に応えるという点では、意味があると思います。

当法人は当業務日誌で発信した情報について正確な情報をお伝えするように努力をしますが、誤り・正確さ・取引の正当性などについては、当法人およびその情報提供者は一切の責任を負いません。

記事を読まれた方又は第三者が当該業務日誌に記載されている情報などに基づいて被ったとされるいかなる損害についても、当法人およびその情報提供者は損害賠償その他一切の責任を負担致しません。

記事の内容についてのご質問はお問い合わせのページよりお願いいたします。

ご質問の内容によっては有料でのご対応、もしくはご返答いたしかねる場合がございますので、あらかじめご了承ください。