消費税は「届け出の税金」と言われるとおり、いろいろな種類の届出書があります。
なかでも「○○選択届出書」と「○○選択不適用届出書」は、納税者の方からあえて提出する書類です。
「○○を選択した方が有利だ、○○を選択していたが取りやめた方が得だ」という見込みに基づく税金対策等に用いられます。
「消費税課税事業者選択届出書」と「消費税課税事業者選択不適用届出書」
消費税を納める義務がない者(免税事業者)が、あえて課税事業者になることを選択する届出書と、それを取りやめて免税事業者に戻るための届出書です。
例えば、大規模な設備投資を行う予定等がある場合には、課税事業者になっておけば、売上に係る消費税より仕入・経費に係る消費税の方が大きくなるため、消費税の還付を受けることができます。
ただし、いったん課税事業者を選択すると、最低2年間は選択不適用届出書の提出ができません。
「還付を受けられる」ということだけで判断するのではなく、複数年を通して有利か不利かを見極める必要があります。
「消費税簡易課税制度選択届出書」と「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」
消費税の課税事業者が、あえて簡易課税制度という計算方法を選択しようとする届出書と、それを取りやめて原則的な計算方法に戻そうとするための届出書です。
消費税は、原則として次の算式で計算します。
売上に係る消費税-仕入・経費に係る消費税=納めるべき消費税額
一方、簡易課税制度は、事業区分によってみなし仕入率を定め、算式中の「仕入・経費に係る消費税」の集計を簡便化する制度です。
売上に係る消費税-(売上に係る消費税×みなし仕入率)=納めるべき消費税額
計算方法が違いますから、当然納める消費税も違ってきますので、シミュレーションしてみるとよいでしょう。
一般的に、人件費率の高い業種は簡易課税を選択した方が有利だと言われています。
ただし、簡易課税制度を選択することができるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者です。
また、いったん簡易課税制度を選択すると、最低2年間は選択不適用届出書の提出ができませんので、注意してください。
「消費税課税期間特例選択届出書」と「消費税課税期間特例選択不適用届出書」
消費税の課税事業者が、あえて課税期間を短くしようと選択する届出書と、それを取りやめて元に戻そうとするための届出書です。
消費税の課税期間は、個人事業者は暦年、法人は事業年度ですが、3か月ごと又は1か月ごとに短縮することができます。
近く消費税の還付が見込まれる場合に、課税期間を短くしておけば、すみやかに還付を受けることができます。
ただし、短くした課税期間ごとに消費税の申告をしなければならず、手間がかかります。
また、いったん課税期間を短くしてしまうと、最低2年間は選択不適用届出書の提出ができません。
届出書の提出期限
上記にご紹介した届出書は、この方法を選択したいと納税者の方からあえて提出するものですから、税務署に対する事前の意思表示が必要になります。
そのため届出書は、選択適用を受けたい又は選択適用を取りやめたい課税期間の初日の前日、つまり課税期間が始まる前までに提出しなければなりません。
たかだか一枚の書類ですが、提出期限までに提出したか否かで、納税額が大きく変わることもありますので、細心の注意が必要です。

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