OECDモデル租税条約の改訂
租税条約は、課税関係の安定(法的安定性の確保)、二重課税の除去、脱税及び租税回避等への対応を通じ、二国間の健全な投資・経済交流の促進に資するものであり、日本は平成30年3月1日現在、70条約等、123か国・地域との間で適用されています。
租税条約には、国際標準となる「OECDモデル租税条約」があり、OECD加盟国を中心に、租税条約を締結する際のモデルとなっています。
その改訂版(11版)が、2017年12月18日に公開されました。
進出先国で課税されるか否かの定義の改正
国外に事業拠点を設ける際には、子会社・支店・駐在員事務所の形態があります。本格的にその国に進出する前の段階として、情報収集、市場調査・開拓、購買活動などをするために、拠点を設けることがあります。
その拠点が課税対象となるのか否かを規定するのが、恒久的施設(PE: Permanent Establishment)の定義です。
モデル条約では5条で定義されています。
前回の改正は1977年であり、この間、解説書であるコメンタリーでの改正はありましたが、定義そのものの改正は、40年ぶりとなるものでした。
5条PE定義改正の背景
国際的に事業を展開する多国籍企業の多くは、あらゆる手を使い、合法的に租税回避をします。
人為的にPE認定を回避するようなビジネスモデルの採用で、その国で課税されないか、されてもより少ない所得に対して課税されるような行動をとります。
具体例でいうと、「アドビ事案」に代表されるコミッショネア(=日本の場合商法551条の問屋を使う)や「アマゾン事案」に代表される4項のPE除外規定のあてはめです。
OECDは、税源浸食と利益移転(BEPS: Base Erosion and Profit Shifting)への取り組みの過程で、モデル条約を改正しました。
海外進出を拡大する企業への影響
この改正を受け、今後、各租税条約や各国の税法の改正が行われることとなります。
実際に影響を受けるのはまだ先の話です。
とはいえ、以前から日本の経済界からも、源泉地国での課税強化の行き過ぎとなる懸念も示されていましたし、定義に関しての不明確性による納税者の課税関係の不安定さの恐れも指摘されていました。
海外進出を拡大する企業にとっては将来現実的に影響の出てくる改正です。
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