アメリカの税務調査とサモンズ
アメリカの税務調査が原則として任意調査であることは、日本の場合と同様です。
日本の場合、資料調査課の調査、いわゆる「料調」は、裁判所の発する捜査令状こそないものの、
刑事訴追を前提とする「マル査」の調査のように厳しい、と言われています。
内偵により、違法申告を物証的に確認していることが多いからなのですが、それでもこれは任意調査です。
アメリカには、刑事訴追を前提とするものではありませんが、裁判所の召喚状に基づいて行う強制調査(サモンズsummons)があります。
日本の、「料調」と「マル査」の中間のような制度です。
サモンズが発せられると
サモンズの対象者は、決められた日時と場所へ要求された帳簿または記録を持って出頭すること、そして宣誓のもとに証言することが要求されます。
聴聞官は、召喚された者の宣誓のもとに通常質疑応答形式で聴聞を行います。
出頭者には、日当及び旅費及び提出資料のコピー代が支給され、助言または代理人を随伴する権利があり、録音機等の携帯も許されます。
ジョン・ドウ・サモンズ(John Doe Summons)
日本の税務調査が、必ずしも納税者本人に限定されず、事業取引先への「反面調査」や金融機関への「銀行調査」があるように、
サモンズでも、法律上、調査対象を納税者に限定していません。
対象の幅広さを象徴するものに、匿名召喚状(John Doe Summons)というものがあります。
サモンズでは、その対象となる納税義務を負うべき納税者を特定するのが通常なのですが、
特殊な場合には、納税者を特定するためのサモンズを発することが認められています。
スイスUBS銀行へのサモンズ
投資アドバイザーの助言により脱税をしていた疑いのあるアメリカ人顧客情報を引き渡すよう、2008年に米国税務当局がスイスの最大銀行UBSに匿名召喚状(John Doe Summons)を発しました。
スイス政府とスイス連邦議会は、米国税務当局との交渉による合意により、UBS銀行に対し情報開示を許可し、2010年暮れまでに4450人の口座情報が米国に引き渡されました。
スイスの守秘義務を売りにする銀行商売に風穴を開けた米国サモンズの威力が世界的に一躍有名になりました。
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