消費税率引上げに当たり、中小事業者を中心に、消費税の価格への転嫁について懸念が示されています。
そのため、中小事業者等が消費税を価格転嫁しやすい環境を整備するため、消費税の転嫁拒否等の行為に対して、政府が監視・取締りを行っていくとしています。
平成25年10月1日から施行された消費税転嫁対策特別措置法では、消費税率の引上げに当たって、消費税の転嫁を拒否する行為等を禁止しています。
平成26年4月1日以降に特定供給事業者から受ける商品または役務(サービス)の供給に関して、特定事業者が特定供給事業者に対して消費税の転嫁拒否等の行為を行う場合が対象となります。
適用となる特定事業者と特定供給事業者との関係は、次のように二つのパターンになります。
A 特定事業者(買手):大規模小売事業者
(売上高100億円以上、一定面積以上の店舗)
特定供給事業者(売手):大規模小売事業者に継続して商品等を供給する事業者
B 特定事業者(買手):a~cの事業者から継続して商品等の供給を受ける法人
特定供給事業者(売手):特定事業者に継続して商品等を供給する事業者
a 個人事業者
b 人格のない社団等
c 資本金3億円以下である事業者
消費税の転嫁拒否等の行為として、消費税転嫁対策特別措置法で禁止している行為は、具体的には次の五つ行為です。
①減額
特定事業者は、合理的な理由なく、既に取り決められた対価から、事後的に減じて支払うことにより、消費税の転嫁を拒否してはいけません。
次のような場合には、減額とはなりません。
商品に瑕疵がある場合や、納期に遅れた場合等、特定供給事業者の責めに帰すべき理由により、相当と認められる金額の範囲内で対価の額を減じる場合
②買いたたき
特定事業者は、合理的な理由なく、通常支払われる対価に比べて対価の額を低く定めることにより、消費税の転嫁を拒否してはいけません。
「通常支払われる対価に比べて対価の額を低く定めること」とは、具体的には、特定事業者と特定供給事業者との間で取引している商品等の消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低く定めることです。
次のような場合には、買いたたきとはなりません。
大量発注、共同配送、共同購入などにより、特定供給事業者にも客観的にコスト削減効果が生じており、当事者間の自由な価格交渉の結果、コスト削減効果を対価に反映させる場合
③ 商品購入、役務(サービス)利用、利益提供の要請
特定事業者は、消費税の転嫁を受け入れる代わりに、特定事業者の指定する商品を購入させたり、サービスを利用させたり、また、経済上の利益を提供させる行為を行ってはいけません。
・取引先にディナーショーのチケットの購入、自社の宿泊施設の利用等を要請する場合
・消費税の転嫁の程度に応じて、取引先ごとに目標金額を定め、協賛金を要請する場合
・通常必要となる費用を負担することなく、取引先に対し、従業員等の派遣又は増員を要請する場合
・取引先に対し、取引の受発注に係るシステム変更に要する費用の全部又は一部の負担を要請する場合
 
④ 本体価格での交渉の拒否
特定事業者は、価格交渉を行う際、特定供給事業者から消費税を含まない本体価格での交渉の申出を受けた場合には、その申出を拒否してはいけません。
⑤ 報復行為
特定事業者は、消費税の転嫁拒否等の行為があるとして、特定供給事業者が公正取引委員会等にその事実を知らせたことを理由として、取引数量を減じたり、取引を停止したり、不利益な取扱いを行ってはいけません。
上記の適用は、平成25年10月1日から平成29年3月31日までとなります。
これらの転嫁拒否行為の問い合わせや相談は、公正取引委員会取引企画課・消費税価格転嫁等総合相談センターなどで受け付けています。

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