社債の一種である「少人数私募債」は、比較的簡単に発行できることから、中小企業の資金調達手段として活用されるだけでなく、節税の手法としても注目されてきました。
少人数私募債
社債は大会社が発行するものと思われるかもしれませんが、次のような条件を充たせば、簡単に発行することができます。
(1)社債権者が50人未満であること
(2)社債権者に適格機関投資家(金融や投資のプロ)がいないこと
(3)縁故者に直接募集をすること
(4)社債一口の額面が、発行総額の50分の1未満であること
(5)募集総額が1億円未満であること
(6)譲渡制限を設けること
借入とは異なり、担保や保証人は不要です。
満期日に一括返済となることと毎年社債引受者に対して利息を支払う必要がありますが、月々の返済がないため、調達した資金を充分に活用することができます。
さらに、社長など役員個人が、従来より会社に貸付をしているケースがありますが、この場合、この貸付について貸付利息を受け取る役員個人にとっては、その受取利息は所得税法上の雑所得にあたるため、累進税率が適用される総合課税となり、原則として確定申告が必要となりますが、少人数私募債を引き受けた場合は、役員個人が受け取った社債利息は利子所得となり、20%の源泉分離課税で納税が完了することになります。
役員個人が高所得者であれば、税率の差分だけ節税効果が得られるという仕組みです。
平成25年度税制改正
政府は、公社債等と株式等に対する課税方式に差異があり分かりづらいこと等から、金融所得課税を一体化することによって、「貯蓄から投資」へと促し、より活発な経済活動を目指しています。
平成25年度税制改正では、金融所得課税の一体化の一つとして、少人数私募債の節税手法にメスが入れられました。
「同族会社が発行した社債の利子でその同族会社の役員等が支払を受けるものは、総合課税の対象とする」という内容です。
これは、平成28年1月1日以後に発行される公社債から適用となります。
裏を返せば、平成27年12月31日までに発行した公社債の利子については節税効果が得られるということです。
駆け込みで発行を検討する法人が増えそうですが、その資金調達が本当に必要かどうかを冷静に見極めること、そして少人数私募債を発行する際は適正な手順・適正な利率で行うことが肝要です。

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