法人税法と国税通則法の仮装隠蔽規定
隠蔽仮装に関しては、法人税では、役員給与の損金不算入、不正行為の費用の損金不算入、青色申告の承認申請の却下・取消し、の4条文に規定があり、 国税通則法では、重加算税の条文にのみ規定がありますが、刑事罰の規定にはなっていません。
仮装隠蔽の誤ちを犯したというだけでは、損金不算入・青色却下取消・重加算税の行政制裁を受けるだけです。
法人税法と国税通則法の偽り不正規定
偽り不正に関しては、法人税法では、罰則を定める2条文に規定があり、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金」等の刑事罰の規定となっています。
国税通則法では、更正処分期間制限7年への延長、延滞税の計算除外期間排除、時効の2年延長、その他全部で5条文に規定がありますが、刑事罰の規定にはなっていません。行政制裁の規定です。
意見がバラバラ
個別税法の刑事犯に該当するものに限って国税通則法の偽り不正条規が適用されるべきなのか、個別税法の偽り不正の条規と無関係に国税通則法の偽り不正条規が適用されてよいのか、そもそも両法律の概念は同じなのか、さらに「偽り不正」と「仮装隠蔽」の概念の範囲の広狭も、学者等の意見はバラバラです。
ただし、判例と当局側見解は統一されつつあり、「仮装隠蔽」より「偽り不正」の方が広い概念としています。
ここでも赤信号無視状態
行政処分規定の「仮装隠蔽」より刑事罰規定の「偽り不正」の適用範囲がより広いというのは、「法構造としておかしい」と言わざるを得ません。
偽り不正該当なら、本来的には刑事訴追をするべき対象です。
平成28年度の刑事訴追件数は41件、1件当たりの脱税額は8500万円です。
仮装隠蔽の調査指摘件数は、査察件数の3桁も多く、1件当りの税額は何分の1かです。
実態としては、偽り不正の追及は、仮装隠蔽の追及よりはるかに範囲が狭く、悪質度の高いものを対象にしています。
ここでも赤信号無視者と同じ状態
実態に合わせた理解があるとすると、すでに刑事犯既遂であるが、ほとんどの場合において、「訴追を免除・放置されている」ということになります。
赤信号無視の既遂者と同じ扱いです。
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