株式投資信託(追加型)の課税実務においては、「個別元本」と「取得価額」の二つの数字が出てきます。

個別元本とは

個別元本は、投資信託を購入した時の時価で、それは「購入価額」のことです。

株式であれば「株価」に相当するものですが、投資信託の場合は「基準価額」となります。

具体的には、ファンドに組み入れられた株式や債券などの資産の時価総額を受益権口数で割った一口当たりの純資産価額のことです。

通常、投資信託は設定時点の基準価額を1万円として販売しています。

取得価額とは

一方、取得価額は、個別元本に販売手数料(税込)を加えたものです。

例えば、個別元本が9000円で販売手数料3.24%の場合、取得価額は9000円+291円で9291円となります。

それでは、この二つの金額が課税実務でどのような違いを生むのかを整理してみます。
特別分配金では個別元本を使用

特別分配金の計算をする場合には、個別元本を使用します。

特別分配金は、分配金を支払った後の基準価額が個別元本を下回る場合、その下回った額の部分を指します。

先の例では、個別元本9000円、分配金支払い後の基準価額が8800円、分配金が300円とすれば、特別分配金は200円、普通分配金は100円となります。

この普通分配金は、配当所得として課税の対象になりますが、特別分配金は、「元本の払い戻し」に相当しますので課税対象外です。

特別分配金による修正

しかし、特別分配金が支払われると、個別元本と取得価額は特別分配金の金額だけ修正されます。

先の例では、個別元本は8800円、取得価額は9091円となります。

譲渡損益では取得価額を使用

投資信託を売却して譲渡損益を確定する際には、取得価額を使用します。

先の例で、ファンドの運用が良好で譲渡時には基準価額が10500円になっていれば、譲渡益は10500円-9091円で1409円となります。

なお、特定口座では、これらの計算結果を取引報告書に掲載してくれていますので、自身で計算することはありません。

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