平成28年分の特定口座の年間取引報告書の記載欄には、「上記以外のもの」として「⑩公社債~⑭国外公社債等又は国外投資信託等」が追加掲載されています。

これは、平成28年分から特定公社債等の利子等が上場株式等の配当等として、特定口座に組入れが可能となり、当該口座内で上場株式等の譲渡損と損益通算が可能となったことによるものです。
取引報告書の記載に違和感

株式等を購入しただけで、実感として株式等を譲渡していない、との思いにもかかわらず、報告書の上場分の「①譲渡の対価の額(収入金額)」の欄に株式等を購入した額が記載されており、そして、同額が「②取得費及び譲渡に要した費用の額等」の欄にも記載されています。

何故このように記載されるようになったのかというと、特定口座を開設している人は、一般的に、株式等を購入する際には、特定口座内に預けてあるMRF(マネ―・リザーブ・ファンド)を売却等して購入します。

MRFは公社債投信で、この売却等の収入金額は、平成28年分から「譲渡収入金額とみなされる」ことになったことが理由のようです。

同額の記載ですから、所得の発生はありませんので、所得税、住民税、さらには、国民健康保険料、介護保険料にも影響はありません。

高齢者の医療費負担に影響も

しかし、収入金額によっては、高齢者(後期高齢者も含む)の医療費負担、すなわち、1割負担か現役並みの3割負担になるかの問題です。

つまり、高齢者でも一定の要件を充足すれば、ケースバイ・ケースですが、530万円を超える収入を基準として、3割負担となる可能性もあります。

この収入基準には、上場株式等の収入金額もその範囲に含まれます。
所得税と住民税それぞれ異なる課税方式

このようなことを危惧してかどうかわかりませんが、平成29年度の税制改正において、「上場株式等の配当等に関しては、住民税と所得税と異なる課税方式が可能であることを明確にする」、といった内容が記載されています。

現行地方税法では、所得税の申告前に住民税で異なる申告をすれば住民税の申告が優先されるとしています。

所得税は「総合課税」、住民税は「申告不要」と、いろんなバリエーションがあると思います。

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