預貯金は遺産分割の対象外
「相続財産」と聞いて思い浮かべるものに、「預貯金」を挙げる人は少なくないでしょう。
預貯金については通常の相続財産とは少し取扱いが異なり、実は、遺産分割の対象外であるとされているのです。
相続開始により当然分割される預貯金
相続財産は、相続が発生すると、遺産分割により各相続人の相続分が確定するまでの間は、各自の相続分に応じて共有とされるのが原則です。
しかし、預貯金はその性質上、分割が可能な「可分債権」であり、相続財産中に可分債権があるときは、「その債権は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないものと解される」とされていました。
つまり、可分債権である預貯金は「当然に相続分に応じて分割され、各共同相続人の分割単独債権となる」ものであって、遺産分割の手続を要しないものであるため、そもそも遺産分割の対象とはならないということになるのです(最判平成16年4月20日)。
実務と判例の食い違い
一方で、実務上は判例と異なり、預貯金についても相続人間で遺産分割の対象とする合意がある場合には遺産分割の対象とすることが認められています。
また、銀行側でも相続人全員の同意書や遺産分割協議書の提出がなければ、相続人1人からの払戻請求に応じることは難しいのが実情であり、実務と判例で食い違いが生じていました。
「対象外」が見直しになるか
しかし現在、この預貯金を遺産分割の対象外とする判例が見直される可能性が出てきています。
今年3月23日、最高裁第一小法廷は預金を他の財産と合わせ遺産分割の対象にできるかどうかが争われた審判の許可抗告審で、審理を大法廷に回付し、いよいよ大法廷での弁論期日が10月19日に指定されました。
これにより判例が変更された場合は、今後の相続実務、銀行実務に大きな影響を与えることが予想されますので、その判断が大いに注目されています。

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