居住用家屋と敷地への特例
自己の居住用家屋とその敷地に対しては税制上いろいろな優遇特例があります。
居住用土地建物の譲渡所得の特例とか、被相続人の居住の用に供されていた宅地に係る小規模宅地の評価減の特例とかです。
居住用家屋は二つあってはいけないか
家屋を複数所有する人にとっては、居住用家屋が複数になることはありえます。
それで、先に例示した、居住用土地建物の譲渡所得の特例の規定では、法律ではなく政令ではありますが、「その者がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、これらの家屋のうち、その者が主として居住の用に供していると認められる一の家屋に限るものとする」としています。
それでは居住用土地建物というとき、いつも「主として」を基準に「一つに限る」ということになるのでしょうか。
「一つに限る」の規定がない
先に例示した、相続税に関する居住用小規模宅地の評価減特例の場合をみると、「主として」を基準に「一つに限る」との規定が、法律にも、政令にも、省令にもありません。
そうすると、複数の家屋を自己居住用としていた被相続人の場合には、それら複数の家屋の敷地について、どれにも小規模居住用宅地の評価減特例が使えることになります。
税務当局はそう解釈しない
この小規模居住用宅地特例は以前、通達で規定していましたが、このような特例を通達で定めることに異論があり、昭和58年に法律となったという経緯があります。
そして、以前の通達では「相続開始時において被相続人が主として居住の用に供していた宅地をいうものとする」とされていたので、税務当局としては、現在の法律の解釈を、通達時代と同様「主として」を基準に「一つに限る」としていました。
敗訴して今年の税法改正に期す
この解釈をめぐる争いが起き、地裁と高裁の判決がありました。
いずれの判決も、税務当局の解釈をNOとしました。
今年の税制改正大綱に「特定居住用宅地等は、主として居住の用に供されていた一の宅地等に限られることを明確化します」とあるのは、この判決をうけたものでした。

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