最近の判例から見た競業避止義務
労働者が退職する際に、営業上の企業機密や顧客の個人情報等の漏洩を防ぐ目的で一定期間の競業他社への就業を禁止している場合があります。
平成22年に出された判決から競業他社への就業の禁止について考えてみたいと思います。
ヤマガタ事件(東京地裁 平22、3、9)
加工会社の元支店長が、退職金を請求したところ、会社は就業規則に定める懲戒解雇や競業禁止義務違反をしたとして不支給とした。
東京地裁は本人の退職届が先に提出され雇用関係は消滅している為懲戒解雇は無効、
競業する転職先へ顧客を紹介し、元会社の取引量を減少させたとしても、その不利益の度合いは少なく、勤続の功を抹消、減殺するほどの背信性はないとされた。
三佳テック事件(最―小判 平22、3、25)
産業用ロボの製造会社が退職後に同業を起業した元社員らに競業避止義務違反として損害賠償を求めた。原審では共同不法行為とされたため、元社員らが上告、
最高裁では営業秘密は使用せず、
信用を落としめる等の不当な営業活動はしていないこと、自由競争の範囲内であり、不法行為ではないとされた。
三田エンジニアリング事件(東京高裁平22、4、27)
退職直後に競業他社へ転職した元従業員にビルメンテナンス会社が退職金返還請求をした。
高裁では競業禁止規定は職業選択の自由を制約するもので代償措置も講じていないとされた。
また、誓約書の内容から営業機密を開示、漏洩した場合などに限り規定は有効とするが、機械の説明書による保守点検のノウハウは営業機密には当たらないため、退職金不支給は無効とされた。
競業避止義務が認められるハードルは高い
競業避止義務違反の判断基準としては、
①明確な特約があったか
②営業機密を知りえる立場か
③企業が被る損害の程度
④競業禁止期間、地域、対象となる職種の合理性の有無
⑤代替措置の有無 同業への就業を禁止する間の一定の所得補償等の代替措置
判断基準や判例を見ても競業禁止を確実にするのはたやすいことではありませんが、何も策を講じなければ会社は主張出来ません。
訓示的、抑止的意味合いであっても就業規則には従業員の引き抜き防止規定と合わせて規定しておくことが重要でしょう。

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