移転価格税制とは
移転価格税制とは、国外関連者との取引価格を操作することにより、国内の所得を海外へ移転することを防止する税制です。
この税制は、昭和61年改正により制定され、その後の企業活動の国際化に伴い大きくクローズアップされてきました。
具体的には資本関係が50%以上ある国外関連者(法人)との間の①低額譲渡、②高額買入の2つのケースを想定しています。
どちらの場合についても、独立企業間価格で取引があったものとして、低額譲渡であるときは、独立企業間価格と売上対価との差額を、高額買入があるときは、仕入価額と独立企業間価格との差額を、課税所得の金額にプラスすることとなります。
資本関係50%以上という特殊な企業間取引に適正な所得を反映させ、所得の海外移転を防止し、わが国の課税権を確保しようというわけです。
国外関連者に対する寄附金の損金不算入
この制度の導入直後には、上記のような「取引」を通じて所得の移転が行われた場合には移転価格制度が適用される一方で、単なる金銭の贈与や債務免除については一定の限度内で損金算入が認められる状態でした。
そこで、平成3年の税制改正により、国外関連者に対する寄附金は全額損金不算入とすることとなりました。
グレーゾーンは寄附金課税に流れがち
以上のような経緯で、国外関連者については移転価格税制と寄附金の全額損金不算入という2つの制度ができあがりましたが、実務では、両者のうち、どちらを適用するのか、判断の難しい場面がよくあります。
本来は価格決定プロセスや「贈与の意思」の有無など、事実認定の問題なのですが、過去の税務当局の対応を見ると、大手企業でない場合には、寄附金による処理に流れがちでありました。
理由としては
①移転価格税制の場合、抽象的な「時価」ではなく、「独立企業間価格」との差額の否認であるため、その算定が必要となること
②移転価格税制の場合、事後の対応的調整として相手国の税務当局との相互協議が行われ、結果が覆される恐れもあること
③移転価格税制の更正期間が6年であったこと
が挙げられます。
ただ、近年は中堅・中規模企業の移転価格の税務調査も増えてきています。
このような会社でも移転価格ポリシーの構築が急務となっています。

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