所得税及び法人税において、賃貸ビル、事業用ビルの外壁塗装や室内の壁紙の張り替え等(以下、外壁塗装等)の工事費は、通常、修繕費として必要経費又は損金の額に算入されます。
事業供用後の外壁塗装等の処理
これら外壁塗装等は、通常、当該資産の価値の増加又は使用可能期間を延長させるものではなく、減価償却資産であればこそ生ずる、よごれ、さび、しみ、損傷等の現象を予防し、現状を維持することで、予定された機能を発揮させるための欠くことのできない、いわゆる機能の維持管理のための費用といえます。
したがって、所得金額の計算上、金額の多寡にかかわらず、修繕費として処理されます。
事業供用時の外壁塗装等の処理
最近、中古ビル(賃貸ビル、事業用ビル)の市場が活況を呈しています。
築15年程度を経過した中古ビルを購入し、事業の用に供するため外壁や室内をきれいにするために塗装、壁紙の張り替えをすることはよくあります。
この場合の外壁塗装等は、無条件に修繕費として処理されるものなのかどうか気になるところです。
所得税、法人税では、購入した減価償却資産の取得価額は、次に掲げる①と②の金額の合計額と規定しています。
①当該資産の購入代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
②当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の価額
この規定からすると、中古ビルを取得し、それを事業の用に供するために支出した外壁塗装等の工事費は、修繕費ではなく、取得価額を構成すると考えられます。
悩ましい判断
現に事業の用に供されている賃貸ビルの取得にあたっての外壁塗装等の工事費については、微妙な問題を招来させます。
このような場面に遭遇したときは、当該外壁塗装等の支出が取得価額を構成するか、それとも修繕費として処理されるかで課税所得に大きな影響を及ぼしますので、外壁塗装等の実施時期については、慎重な判断が求められます。

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