租税回避とは
租税回避の一般的な定義は、「私法上の選択可能性を利用し、私的経済取引プロパーの見地からは合理的理由がないのに、通常用いられない法形式を選択することによって、結果的には意図した経済的目的ないし経済的成果を実現しながら、通常用いられる法形式に対応する課税要件の充足を免れ、もって税負担を減少させあるいは排除すること」(金子宏『租税法〈第20版〉』124頁)とされています。
噛み砕いて言うと、「合理的ではない取引形態で、税法の抜け穴を使って、節税する」ことであり、納税者側からは憲法84条の租税法律主義でOK、国税側からは憲法14条の租税公平主義でNGと主張されます。
ここでのポイントは、「合理的な理由がある、通常の法形式かどうか」です。
裁判例(武富士事件)
贈与税の租税回避について争われたのが「武富士事件」(海外財産の贈与と住所の認定)です。
これは、「日本に住所を有しない者への国外財産の贈与は日本の贈与税の対象外」とされていた当時の税制を使い、子息を香港に居住させることで1,653億円の財産にかかる贈与税を回避した事件です。
最高裁まで争われて、結局納税者側が勝利しました(2011年2月18日)。
ここでは、香港居住の合理的な理由と住所の認定という法形式が争われましたが、結局、合法であるとの結論となりました。
その後、国税側は税法の改正でこの抜け道をふさぎました。
グレーな租税回避行為は税法改正でしか対処できないのです。
節税と租税回避の違い
節税は税法が予定している中で税負担の減少を図る行為であるのに対して、租税回避は税法が予定していない異常な法形式を用いて税負担の減少を図る行為です。
異常かどうかは「社会通念で決められる」ことになります。
境界は明確ではありません。
世の中には、複数の一般措置や特例措置を組み合わせることで、租税負担を軽減・回避するタックス・シェルターというスキームが種々考案され、利用されてきました。
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