一定の同族会社には、通常の法人税の他に「特別の税金」が課されることがあります。
このことを「特定同族会社の留保金課税」と言います。
この留保金課税の是非はともかく、現行法では、資本金1億円以下の会社にはこの課税の適用はありませんので、多くの中小企業ではこの規定の存在を意識する必要はなくなりました。
しかし、商法から会社法に変わったことにより、留保金課税の規定が一部改正されています。
(1)配当の流出時期
税務において、当期の留保所得の金額を計算する際、期中に配当として社外に流出した金額をいつの事業年度の所得から控除するか、すなわち、配当による利益積立金(利益剰余金)が減額される時点についての明確な規定はありませんでした。
旧商法では、配当(中間配当は除く)は事業年度終了後の定時株主総会で利益処分が可決されて確定することを明文で規定していました。
そこで、税法は、この商法の規定に準拠し、「確定決算において利益の処分として流出される配当は、翌期に確定するが、その効果は当該事業年度末にさかのぼり、当該事業年度の社外流失」として取り扱ってきました。
(2)会社法ではいつでも配当できる
会社法では、定時株主総会に限らず配当(自己株式の取得も含む)は期中でも行うことができるようになりました。
これを受けて税務では、従来の取り扱いでは運用できなくなり、「利益積立金(利益剰余金)を減額するのは配当の基準日ではなく剰余金の配当等の効力が生ずる日」としました。
(3)配当の流出時期のみなし規定
具体的には、従来の定時株主総会の配当決議によると同様な留保課税の実務が踏襲できるよう、「配当の額は、当該基準日に属する事業年度に支払われたものとする」、みなし規定を設けました。
このみなし規定の対象となる配当は、「配当決議の日がその支払に係る基準日の属する事業年度終了の日の翌日から当該基準日の属する事業年度に係る決算確定日までの期間内にあるものに限る」とされています。
この規定の適用を受けるためには、株主資本等変動計算書の配当に関する注記において配当基準日及び効力発生日について適切な開示を行う必要があります。

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