遡及効は法定果実の前まで
遺産分割協議が成立すると、民法の上では相続開始時に遡ってその効力が生じることになっています。
ただし、賃貸建物を相続した場合の建物から生じる賃料のような法定果実は相続財産そのものではないので、未分割時の共有としてのその賃料に係る所得は遡及変更されません。
婚外子差別違憲判決の余波
ところが、昨年9月4日の婚外子(非嫡出子)相続差別違憲判決のような場合、共有割合に変更が生ずるので、不遡及の原理が維持できないことになりました。
とは言え最高裁は、「遅くとも2001年7月当時においては憲法違反であった」としたものの、この違憲判断が「すでに確定的なものとなった法律関係にまで影響を及ぼすものでない」ともしました。
3つの時期区分に分かれる
その結果、婚外子差別につき、
①2001年7月より前の合憲時相続か
②2001年7月以後で昨年9月4日以前の違憲時相続か
③昨年9月5日以後の違憲時相続か
で税法の取扱いが異なることになりました。
相続税では遡及に配慮
相続税に関しては、国税庁は、過去の申告において婚外子規定を適用して相続税額の計算を行っているという理由のみでは更正の請求の対象にはならないとしました。
しかしながら②の違憲時相続(2001年7月以後で昨年9月4日以前の相続)については、僅かにでもそれ以外の理由が併せてあれば、相続税の修正申告や更正の請求をすることができる余地を残しました。
所得税では遡及配慮なし
それに対して所得税では、実務の混乱を避けるためか、全くの余地なしの取扱いになっています。
すなわち、①の合憲時相続(2001年7月前相続)の場合、未分割状態が継続していたとしても、婚外子差別のある共有割合のままで所得計算します。
②の違憲時相続(2001年7月~昨年9月4日以前相続)の場合、その9月4日までに収入の確定するものについては婚外子差別のある共有割合のままで所得計算しますが、9月5日以後に収入確定のものは婚外子差別のない共有割合で所得計算します。
なお、昨年9月5日以後の相続の場合、未分割状態であっても、それにかかる所得税の申告はこれからのことなので、特に遡及変更とは無関係です。

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