最高裁二重課税禁止判決の独自内容
年金への所得税と相続税の二重課税を禁ずる先月7月6日の納税者逆転勝訴最高裁判決(長崎地裁は勝訴、福岡高裁は敗訴)の内容は、勝訴していた長崎地裁の判決と少し異なります。
地裁は、「年金への課税は相続税で済んでいるのだから、所得税で再課税すべきではない」としたのに対し、最高裁は、「相続税の課税済み部分はその後の所得税課税において重ねて課税してはならない」です。
年金についての二つの非課税
所得税法には元々退職遺族年金非課税の規定がありました。
今回の年金判決で争点だった「相続取得によるものは非課税」との規定により、退職遺族年金以外の遺族の受け取る年金も、非課税が確認されました。
それでは、元々の退職遺族年金非課税規定は特別に法律規定がなくてもよかったことになったのでしょうか。この疑問は、被告の国税サイドが反論として何度も主張していたところでした。
最高裁判決の独自内容の意味
相続税が課税される相続財産の価額と、所得税が課税される所得の収入金額とには一時の一括課税か、何回かの分割課税か、長期間経過後の課税か、という理由による相違があります。
その相違からくる金額差の部分にのみ所得税は課し得る、というのが、最高裁判決の独自内容です。
その独自内容によって、先の、二つの年金非課税の疑問に答えたのです。
即ち、退職遺族年金は相続課税と無関係に非課税、相続取得年金は相続課税部分のみ非課税、という理解です。
新たな考え方による法解釈
最高裁判決の独自内容の意義は、「相続税は一種の特別な所得税なのだから、相続税の課税済み分部にその後の所得税課税が重複してはならない」と言うことです。
年金について言えば、従来は、「過去に支払い済みの保険料(被相続人が支払ったものを含む)を超過して受け取る年金部分が所得税の課税対象」と理解されていました。
今度は、「この支払原価超過分への課税の前に、相続課税済部分を除外する」と大きく課税対象に変更を加えたのです。
そして、この新たな考え方の影響は遺族年金への課税問題にとどまらず、相続財産に関わるその後の所得税課税全体に及ぶことになります。
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