年金に相続税と所得税を二重課税するのは所得税法違反、と国側敗訴にする最高裁判決が7月6日に下されました。
二重課税の意味
相続による財産の取得は、所得税法における「所得」であるが、課税は相続税法に委ねているので、所得税法では非課税と定めています。
この非課税規定は、税法の重要な原理規定なのですが、その原理を再確認したのが今次の判決です。
相続税法での課税の特徴
相続税の課税対象には、所得税では課税されない未実現の所得も取り込まれます。
将来取得年金の予定額が課税対象となったのはそのためです。類似のものとしては、
①預貯金・貸付金の未収利息等
②3ケ月以内収穫予定の天然果実
③訴訟中の損害賠償金などの債権
④生命保険契約に関する権利
その他があります。
これらが、実現所得となったときには、相続税での評価額部分を超える額だけが課税されるべきです。
源泉分離の利子課税などは、二重課税排除を確定申告による源泉税の還付で行うとなると、そうできるようにするための法改正が必要です。
二重課税を定める矛盾規定
さらに、もっと重要なことは、相続取得財産については相続税で時価課税して、また、その時価で所得税を二重課税するものが沢山あるということです。
それは、不動産や株式などの譲渡性資産です。相続財産を譲渡するときに、相続税課税済みの金額部分に再度課税します。明らかに二重課税です。
これらの法律内部の矛盾規定は、この二重課税禁止判決を承けて、見直されるべき事態に至ったと言うべきでしょう。
アメリカの相続・贈与税・譲渡税
アメリカの相続税は遺産課税で贈与税は贈与者課税なので、相続財産は死亡時に被相続人が相続人に譲渡したような扱いになり、相続人が取得する相続財産に付せられる取得価額は相続時の時価となり、二重課税は排除されるようになっています。
民主党は政権政策で遺産課税を唱えていましたので、近い将来に米国と同じ制度にするつもりなのか、関心の湧くところです。

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