相続は包括的承継
相続は包括的承継といわれ、相続取得財産は相続人が相続時に取得するのではなく、被相続人の取得時から引き続き所有をしていたものとみなすことになっています。
これを、取得時期、取得価額の承継といったりします。
その財産が減価償却資産のときは、取得時期と原始取得価額と償却累計額と未償却残額を引き継ぎます。
包括的承継の趣旨が、「人格間での権利義務の変動がなかったものと考える」ということであれば、減価償却の他の要素である償却方法や耐用年数も一括して引き継ぐというのが自然なことのようにも思われます。
償却方法も引継ぐべきかは文理解釈で
それで、「建物について被相続人の選択していた定率法の適用が引き継げるべき」と主張して訴訟になった事例がありました。
最高裁まで争われましたが、判決は、取得とは所有権の取得の意であり、相続取得も取得の一種であり、法令で取得時期別の選択可能償却方法の制限をしている以上、相続取得もその定めに服するのは当然との文理解釈を示して、納税者を敗訴にしました。
耐用年数を引継ぐべきかは趣旨解釈で
この判決を承けて、「それならば、償却方法のみならず、耐用年数も引き継げないはずだと判断して、相続取得は中古資産の取得に該当するから、中古資産取得時の耐用年数算定方法が適用できるはず」と主張して訴訟になった事例が次におきました。
裁判は、地裁高裁を経て、現在最高裁に上告されています。
地裁高裁ではいずれも納税者敗訴の判決になっているのですが、こちらの判決は前の判決と異なり、条文の文言を前提とする文理解釈ではなく、趣旨解釈による判決になっています。
法令には取得価額の承継としか書かれてなかったとしても、その趣旨を考慮すると、取得価額承継の文言によって耐用年数、経過年数及び未償却残高についても承継することを予定していると解釈すべきが相当と言えるとしています。
行政も司法も論理無視でよいのか
それぞれの判決を読むとそれなりの論理の一貫性はあるのですが、二つの事例の判決を通貫した論理の一貫性はありません。

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