過日、法務省は、熊本県を中心に相次ぐ地震で家屋などが倒壊し、不動産の権利証を紛失した場合の相談窓口を設けました。
その内容は
権利証を紛失しただけで所有権を失うことはない。
登記には印鑑証明書などの本人確認資料も必要で、不正な登記がされる可能性は低い。
不正登記の予防のため、申出をしておけば他人から登記申請があった場合に通知を受け取れる「不正登記防止申出制度」の利用を求める。
というものでした。
権利証の本質
権利証(法令上は「登記済証」または「登記識別情報」)は、不動産の権利(所有権)を持っていることを証明するものですが、手形や小切手などの有価証券と違って、権利証の中に権利そのものが付着しているわけではありませんので、それだけで権利が転々と流通することはありません。
法務省の言う通り、本人なりすまし等で売買できる場合の条件は極々限られています。
家の中に、「権利証」、「印鑑カード」、「カードの暗証番号」、「実印」がセットで置いてあって、それが盗難に遭い、本人なりすまし等の売主が出現したとしても、即一括現金決済に応じた買主が所有権移転登記の安全性を憂慮し、登記申請を司法書士に依頼、司法書士が売主の本人確認を厳重に行った場合には、やはり、なりすまし等の売買は難しいように思います。
注意喚起は買主側にも
注意喚起は、権利証を紛失した人のみならず、買主が大きなリスクを負う場合もありますので、買主側にも必要ではないかと思います。
というのも、このような本人なりすまし等の売買は偽装であり、有効な法律行為でないため、結果、登記も無効であることから、買主は善意の第三者であったとしても、真の所有者から権利の返還を求められれば、登記を戻さなければなりません。真の所有者は、訴訟費用と時間は掛かりますが、最終的に権利は戻ってきます。
一方、買主は、本人なりすまし等の売主に対して損害賠償の請求はできますが、まず、売買代金が戻ってくることはないでしょう。
以上のことから、買主側にも注意喚起が必要だと思います。
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