交際費はなぜ「措置法」規定なのか
法人税を勉強し始めると、「交際費は、なぜ租税特別措置法で規定されているのか」と思う方が多いと思います。
交際費課税については、賛否があるとはいえ、すでに「恒久的なもの」と認知されているでしょう。
それにもかかわらず、法人税「本法」でなく、「措置法」のままとなっているのは、この税制が成立したときの国会事情が少なからず影響しています。
当初は「法人税改正案」で提出された
故武田昌輔先生の「法人税回顧六〇年―企業会計との関係を検証する」(TKC出版)によれば、「交際費の損金不算入制度」は昭和28年度の税制改正案では法人税の本法の規定に盛り込まれていたそうです。
当時は「企業の資本蓄積を大いにやりなさい」という議論が出始めた頃。特別償却制度や準備金制度が登場し、交際費についても「できる限り冗費を節約するように」と法案化されましたが、税制調査会などで全く審議がされずに、突如として話が沸いてきたものであったため、財界等の反発が激しかったようです。
ただ、この法案を議論するはずであった国会(衆議院)は吉田茂首相の不規則発言により、3月14日に解散してしまいます(いわゆる「バカヤロー解散」)。
そのため年度内に、交際費を含めた税制改正法案が成立せず、もう話を出す雰囲気ではなくなってしまったようです。
雰囲気が変わった「造船疑獄事件」
翌年(昭和29年)になると、「造船疑獄事件」(海運・造船会社と政府・与党との間の贈収賄をめぐる疑獄事件)が発生します。
この事件により、政界と花柳界との関わりが明らかにされていきます。
野党も「交際費課税は強化すべきだ」と主張し、ムードが一変し、ここぞとばかりに租税特別措置法案として「交際費の損金不算入」制度は国会を通過し、昭和29年度の税制改正で3年間の臨時措置として規定されました。
武田先生の書籍では、これも「3年間だけ我慢して欲しい」という話であったようです。
その後、交際費課税は、世情により強化されたり、緩和されたり、紆余曲折を経て現在の形になっています。

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