原則は取得原価主義
法人税法では取得原価主義が原則です。
取得原価主義とは、資産の帳簿価格を、その資産の取得時に支払った金額に基づいて計上するもので、決算期末の時価に基づいて計上する時価主義と対をなす考え方です。
取得原価主義のもとでは、評価損や評価益の計上はありません。
補充的にある時価主義の二つの態様
ただし、法人税法でも、補充的には時価主義が採用されています。
時価主義採用の態様は二つに分類されます。
一つは、取得原価主義の修正の場合で、
棚卸資産が著しい陳腐化等に該当した時
有価証券につき強制低価法適用に該当する時
資産が災害により著しい損傷を受けたことその他の事実により評価換えする時
などです。
これらの場合には、評価損が計上されるだけで、評価益が計上されることはありません。
もう一つの分類は、本来的な時価主義です。
評価損だけでなく、評価益となる場合もあります。
本来的時価主義の三つの態様
本来的時価主義の態様を三つに分類できます。
まず、会社更生法、民事再生法等の適用のケースです。
これは評価益を出すことを目的とする特殊な、例外的な態様です。
2番目は、外貨建て債権債務です。
これについては、「発生時換算法」と、決算時に換算しなおす「期末時換算法」とがあり、両者の選択採用が可能なので、望まなければ、期末の評価替えはしなくても済むものです。
3つめは、売買目的有価証券と未決済のデリバティブ資産負債で、これらについては、複数の選択肢がなく、単純に時価評価が強制されます。
選択肢のない時価主義での失念の危険
しかしながら、売買目的有価証券については、その分類に該当するケースが特殊であることもあって、期末評価替えを失念するようなことはないと思われます。
ところが、未決済デリバティブ資産負債は、「期末に決済したものとみなして所得計算する」という規定になっておりますので、決済時は損失計上でも、期末時は利益計上ということもあります。
デリバティブ取引が社会に深く浸透するようになり、貸借対照表にデリバティブ資産負債が気付き難い勘定科目で計上されていることがあります。

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