相続時までへの遡及適用原理
相続税の小規模宅地特例の法律の条文には、「相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し」と書かれています。
遺言や遺産分割により相続取得が確定した人にのみ適用される小規模宅地特例なのに、遺産分割未確定の時期を含めて、一貫して「引き続き当該宅地等を有し」という状態であることを要件としているのです。
相続開始後は必ず遺産未分割状態から出発するので、「引き続き当該宅地等を有し」の状態を確認することは原理的に不可能です。そうだとするとこの小規模宅地特例が機能しなくなってしまいます。
従ってここは、遺言や遺産分割による相続取得の効果は相続開始の瞬間に遡及する、という原理の上で解釈適用されていると理解することになりそうです。
相続分割効果は不遡及との原理
最高裁判例は、未分割の期間中の賃料債権は、「各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当であり」、その帰属関係は「後にされた遺産分割の影響を受けない」と言っています。
最高裁判例に忠実に実務を律するとすると、相続分割が確定したとしても、相続には原理的に絶対的に未分割期間が存在するので、相続財産に係る賃料等の法定果実がある場合には、相続分割の法的効果は遡及しないので、相続人が一人である場合を除き、分割確定時までの共有関係による賃料収入の按分計算による所得税の申告は必須となります。
相続開始時や分割確定年の年初への遡及適用の申告にすると、原理的には、申告もれや賃料債権について相続人間での贈与が生じることになりかねません。
分割効果は年末まで及ばないとの原理
ネット公開の国税局の照会事例によると、法定相続分に応じて判定すると免税事業者となる相続人が、遺産分割が確定したことにより、結果として事業の全部を承継したとしても、その事実により、相続人の当初の納税義務判定が覆ることはありません、としています。
消費税は税の転嫁を予定しているので、納税義務の有無は、前課税期間の末日の現況に基づいて判定すべきであるから、遺産分割確定効果を遡及させるべきではないし、進行課税期間åの末日までその効果は無視されるという、原理的理解に拠っています。
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