芥川賞の賞金品は所得税の課税対象
第153回芥川賞は、お笑い芸人の又吉直樹さんが受賞して話題になりました。
同賞の正賞は懐中時計、副賞は100万円だそうです。
これらの賞金品については、特に非課税として所得税法に特掲されていないため、所得税が課せられることになります。
この場合、受賞の経緯が、既に公表された候補作品の中から選考委員(第三者)により選ばれるものであることから、「著作の対価」としての性質は有していない、源泉徴収の対象(原稿報酬)とはならないものと位置づけられています。
「事業所得」か「一時所得」か?
では、「事業所得」か「一時所得」のどちらに該当するかといえば、少々判断が難しいところではあります。
所得の区分は、「継続性・対価性」があるもの、ないしは「付随収入」としての性質があれば「事業所得」、そうでなければ「臨時的・一時的」な収入として「一時所得」となります。
ただ、この新人文学賞の受賞をきっかけに作家生活(事業)が軌道に乗る方もいらっしゃることを考えると必ずしも「一時所得」とは言い切れない部分があることは否めません。
正面から聞いてみた作家さんがいました!
東京国税局から公表されている文書回答事例の中に「吉川英治文学新人賞の受賞に伴って受領した副賞の取扱いについて」というものがあります。
これは平成10年から作家業を営んでいる方が同賞を受賞した際に受け取った副賞は所得税法上「一時所得」に該当するものと解して差し支えないか、国税局に直接文書で問い合わせたものです。
こちらの作家さんは、同賞は、
①財団法人が選ぶもので「出版社」が選ぶものではないこと
②既存の作品の中から選考委員によって選ばれたもの(非公募型の新人文学賞)であって、自らが応募するもの(公募型の新人文学賞)でないこと
③芥川賞などが源泉徴収の対象でないように、「著作の対価」としての性質は有していないことから、作家としての本来の事業活動による収入ではなく、文筆活動を行う中で一般的に受領し得る性質のものではないから、予期せぬ臨時・偶発的収入だと主張したのです。
結果として、国税サイドはこの作家さんの主張を認めています。

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