複数税率制度への移行に伴い、「適格請求書等保存方式」(日本型インボイス制度)の導入が予定されています。

ただし、当面は、より簡素な方法である「区分記載請求書等保存方式」によって税率の区分経理に対応することになります。

消費税創設時からの、仕入税額控除制度の要件を振り返ってみます。

(1)帳簿方式

平成元年4月~平成9年3月

「帳簿方式」は、仕入の事実を記載した帳簿または請求書等の保存を仕入税額控除の要件とするものです。

仕入を行う事業者は、帳簿の保存があれば仕入税額控除が可能であるため、課税資産の譲渡等を行う事業者には請求書を発行する義務がありませんでした。

(2)請求書等保存方式

平成9年4月~令和元年9月

平成6年度の税制改正において、帳簿方式は、帳簿及び前段階の事業者が発行した請求書等の客観的な証拠書類の保存を要件とする「請求書等保存方式」に改められました。

ほとんどの取引において、請求書等が交わされ保存されていますので、事業者の負担なく要件を厳格化することができました。

ただし、この改正でも、売り手側に請求書等を発行する義務は設けられていませんでしたので、仕入れ業者には請求書等の保存を要件とするということには矛盾が生じていました。

(3)区分記載請求書等保存方式

令和元年10月~令和5年9月

軽減税率導入時から、「適格請求書等保存方式」の導入までの4年間は、「区分記載請求書等保存方式」が要件となります。

区分記載請求書等保存方式とは、請求書等保存方式を維持したうえで、帳簿及び請求書等の記載事項を追加するものです。

区分記載請求書等保存方式では、軽減税率の対象となる課税仕入れがある場合、「軽減対象資産の譲渡等にはその旨」及び「税率の異なるごとに合計した対価の額」が記載された請求書等の保存が求められます。

ただし、売り手側にはまだ請求書等の交付が義務付けられていませんので、請求書等を受ける側が、事実に基づき追記することを認められます。

(4)適格請求書等保存方式(日本型インボイス方式)

令和5年10月~

「適格請求書等保存方式」は、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」等の保存が、仕入税額控除の要件となります。

「適格請求書発行事業者」は、課税事業者でなければ登録することが出来ません。

したがって、免税事業者からの仕入れは仕入税額控除の対象とならないことになります。

ただし、経過措置として、区分記載請求書等の保存を要件に、適格請求書発行事業者以外の課税仕入につき、適格請求書等保存方式の導入から3年間は80%、その後の3年間は50%の割合で、仕入税額控除の計算の基礎に算入することができます。

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