日本が租税条約を締結しているアジア新興国などの一部では、現地子会社などから配当等を受ける場合、条約に定める配当等に係る限度税率(軽減税率)の適用手続きが込み入っているため、条約適用を断念して現地国内法の本則税率による源泉課税を受け入れているケースや、条約で定める限度税率を超えて課される外国法人税の額(限度税率超過税額)の還付手続きが煩雑なため還付を受けられないケースが多くみられるようです。

平成29年3月期から、この租税条約相手国において条約で定める限度税率を超えて課される外国法人税の額(限度税率超過税額)が損金算入の対象となります。

これまでは、内国法人が租税条約締結国で源泉徴収される税額は、条約に定める限度税率の範囲内でしか外国税額控除は認められていませんでした。

限度税率を超える場合、その超える部分の限度税率超過税額は、原則として、租税条約相手国から還付を受けるまで「仮払金」などとして損金の額に算入しないとともに、外国税額控除の適用もありませんでした。

例えば、租税条約の限度税率が15%のところ、相手国より20%で源泉徴収された場合、限度税率15%相当額は外国税額控除の対象となりますが、超過部分の5%相当額については、実際に還付を受けるまで仮払金などとして資産計上しなければなりませんでした。

平成26年度改正で、国際課税原則が帰属主義へと見直されたことに伴い、外国税額控除の規定も整理が行われました。

租税条約を締結している相手国において課される外国法人税額のうち、条約の規定を超えて課された限度税率超過税額について、高率負担部分などと同様に「外国税額控除の対象とならない金額」とする改正が行われました。

平成28年4月1日以後開始する事業年度から、限度税率超過税額については、損金算入することが可能となりました。

損金算入の処理をした後に、限度税率超過税額相当額の還付を受けた場合には、受けた時点で収益計上することになります。

これまで仮払金等として累積されている過去の限度税率超過税額も損金算入することが可能になります。

ただし、税務調査などで問題にならないよう、処理の合理性を示す資料を準備しておいた方が良さそうです。

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