会社役員賠償責任保険(D&O保険)は、会社役員としての業務の遂行に起因して、保険期間中に損害賠償請求がなされたことによって被る損害を補填する保険です。
会社役員が第三者や株主に損害賠償請求訴訟を提起された場合に、第三者訴訟及び株主代表訴訟で勝訴した際の訴訟費用等に対する「基本契約」、株主代表訴訟で敗訴した際の訴訟費用や損害賠償金等に対する「特約」からなります。
このD&O保険について、国税庁から、「新たな会社役員賠償責任保険の保険料の税務上の取扱いについて」が公表されました。
従来、D&O保険の特約保険料については、会社法上の解釈が不明確のため、役員個人が負担することになっており、その保険料を会社が負担した場合には、役員に対する経済的利益の供与にあたるとして、税法上は給与課税の対象となっていました。
これについて、平成27年7月に経済産業省より会社法の解釈指針が示され、一定の手続きを踏めば、特約保険料についても会社負担が可能であることが明確化されました。
この会社法の解釈の明確化を踏まえ、国税庁から、会社が取締役会の承認及び社外取締役を活用した一定の手続を経ることにより、特約保険料を会社法上適法に負担した場合には、役員に対する経済的利益の供与はなく、役員個人に対する給与課税を行う必要はないものとして取り扱われる旨が公表されました。
一定の手続きは、次の通りです。
① 取締役会の承認
② 社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意又は社外取締役全員の同意の取得
上記①、②の手続きを踏んでいない場合には会社法上適法とは言えず、これまで通り、役員に役員に対する経済的利益の供与があると考えられ、給与課税の対象となります。
今回の取扱いは改正ではなく、適用開始日は設けられていませんが、公表による取扱いを踏まえたD&O保険を新たに契約した場合や、既存の保険内容を見直した場合には、契約後の保険料より、会社負担分が給与課税の対象から除外されることとなります。

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