競馬の払戻金による所得を申告しなかったとして所得税法違反に問われていた元会社員に対する判決が言い渡されました。
検察側は、払戻金に係る所得の所得区分を「一時所得」、控除できる必要経費を「当たり馬券の購入費用のみ」であると主張していました。
これに対し、弁護側は、払戻金に係る所得は「雑所得」に分類されるべきであり、当たり馬券以外の「外れ馬券を含めた購入金額全体」が控除の対象になると主張していました。
裁判所の判決は、原則として馬券購入行為に所得源泉としての継続性、恒常性は認められず、当たり馬券による所得は一時所得に該当するとしましたが、本件の馬券購入行為は、恒常的に所得を生じさせ得るもので、払戻金は所得源泉性を有するものと認められることから、「一時所得」には当たらないとしました。
また、本件の馬券購入方法からすれば、外れ馬券を含めた全馬券の購入費用が払戻金を得るための投下資本に当たり、外れ馬券の購入費用と払戻金の間には費用収益の対応関係があることから、「その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額」として必要経費に該当するとの判断がなされました。
この判決では、「雑所得」として、外れ馬券も必要経費として認められたわけですが、今後のすべての払戻金について、認められたわけではありません。
裁判所も、原則を述べているように、一般的には競馬や競輪などの払戻金は、「一時所得」の収入に該当します。
「一時所得」とは、事業から生じた事業所得でもなく、労働の対価の給与所得でもなく、資産の売買利益の譲渡所得でもない、その他の一時的な所得です。
たとえば、次のような所得が一時所得に該当します。
1.懸賞の賞金や福引きの当選金品、競馬や競輪の払戻金
2.生命保険金の一時金や損害保険の満期返戻金
3.法人から贈与された金品
4.遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
上記のうち、業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます。
一時所得の金額は、次の算式のとおりです。
総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額
さらに、一時所得の金額の1/2を他の所得の金額と合計します。
ちなみに、「雑所得」とは、事業所得や給与所得、一時所得など、9種類ある所得のいずれにも分類されない所得です。
たとえば、年金や恩給などの公的年金等、非営業用貸付金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが雑所得に該当します。
そのほか、競馬の払戻金などと混同しがちなのが、宝くじの当選金です。
宝くじの当選金については、宝くじの法律により、「当選金付証票の当選金品については、所得税を課さない」と規定されています。
個人が受け取る宝くじの当選金には、税金は発生しません。
今回の件は、一般的な馬券購入行為とは異なり、所得源泉としての継続性、恒常性が認められるほど、回数、金額がきわめて多数、多額に達していることから、娯楽の域を超えて、営利を目的とする行為と判断されました。
きわめて稀な事例ではありますが、インターネットサービスや予想ソフトが発達した現代においては、今後も起こり得るかもしれません。

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