今年も9月の関東・東北豪雨をはじめ、多くの自然災害が各地に大きな被害をもたらしました。
こうした自然災害の被災者の方々に対して、税制上の軽減措置が設けられています。
地震、火災、風水害などの災害によって、住宅や家財などに損害を受けたときは、
①「災害減免法」による税金の軽減免除による方法
②「所得税法」による雑損控除の方法を受けることによって、所得税を軽減することができます。
これら2つの方法は、どちらか有利な方法を選ぶことができ、次のような違いがあります。
(1)損失の発生原因
①災害減免法・・災害による損失が対象となります。
②雑損控除・・・災害、盗難、横領による損失が対象となります。
(2)対象となる資産の範囲等
①災害減免法・・住宅及び家財が対象となります。
(損害金額が住宅または家財の価額の2分の1以上であることが必要)
②雑損控除・・・住宅及び家財を含む生活に通常必要な資産が対象となります。
(たな卸資産や事業用固定資産、山林、生活に通常必要でない資産は対象外)
(3)所得税の軽減額または控除額の計算
①災害減免法
その年の所得金額によって所得税の免除額、軽減額が決まります。
500万円以下・・・全額免除
500万円超700万円以下・・・2分の1軽減
750万円超1,000万円以下・・・4分の1の軽減
②雑損控除
雑損控除の金額は次のイまたはロのうちいずれか多い方の金額です。
イ 損害金額-所得金額の10分の1
ロ 損害金額のうち災害関連支出の金額-5万円
(4)適用要件その他の事項
①災害減免法
原則として損害を受けた年分の所得金額が1,000万円以下の方に限り適用することができます。
確定申告書に適用を受ける旨、被害の状況及び損害金額を記載して、原則として、確定申告期限までに確定申告書を提出することが必要です。
②雑損控除
災害等に関連してやむを得ない支出をした金額についての領収証を確定申告書に添付するか、確定申告書を提出する際に提示することが必要です。
雑損控除の金額について、その年分の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、翌年以後3年間繰り越して各年分の所得金額から控除することができます。
災害関連支出のうち、
①災害により生じた土砂などを除去するための支出
②住宅や家財などの現状回復のための支出
③住宅や家財などの損壊・価値の減少を防止するための支出
については、災害のやんだ日から1年以内(大規模な災害の場合等には、災害のやんだ日から3年以内)に支出したものが対象となります。
どちらが有利かを判断してみると、所得金額500万円以下の場合は、災害減免法を選択した方が有利となります。
所得金額500万円超1,000万円以下の場合は、個々のケースにより異なるので、それぞれのケースを計算して有利な方を選択することになります。
損害額が少ないときはどちらかというと災害減免法が有利となるようです。
また、損害額が所得金額を超える場合には、3年間繰越すことができる雑損控除を選択する方が有利になるでしょう。

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