所得税は、所得を課税の対象とする租税ですが、「所得とは何か」について明確な定義はありません。

「所得」って何でしょうか。

制限的所得概念(所得源泉説)

各種の勤労、事業、資産から生ずる継続的な収入から得られる所得のみを課税対象とするものです。

毎年発生する経済的利得のすべてが所得を構成するのではなく、所得の範囲を限定しようとする立場であり、一時的、偶発的、恩恵的な利得は所得の範囲から除く考え方です。

イギリスおよびヨーロッパ諸国の所得税制度は、伝統的にこの考え方に基づいていました。

包括的所得概念(純資産増加説)

継続的に一定の収入源から生ずる利得のみに所得の範囲を限定せず、その発生の原因のいかんを問わず、およそ一定期間内に各人について生じた純資産の増加額がすべて所得であるとする考え方です。

一時的、偶発的、恩恵的な利得も所得を構成します。

1913年にアメリカ合衆国で作られた連邦所得税制度は、この考え方を基本的に採用しています。

日本の所得税法では?

日本の所得税は、明治20年に導入されました。

第二次世界大戦前は、所得の範囲は制限的に考えられていました。

第二次世界大戦後は、シャウプ勧告などを経て、包括的な概念である今日のような制度に整備されました。

包括的所得概念のメリット

この概念の採用により、必要経費の概念は従来より大幅に拡張され、雑損控除・医療費控除といった所得控除も拡充されました。

租税法の金子宏教授はこの概念のメリットを次のように指摘しています。

①一時的・偶発的・恩恵的利得であっても、利得者の担税力を増加させるものである限り、課税の対象とすることが公平負担の原則の要請に合致する。

②すべての利得を課税の対象とし、累進税率の適用のもとにおくことが、所得税の再配分機能を高める。

③所得の範囲を広く構成することによって、所得税制度の持つ景気調整機能が増大する。

(金子宏『租税法』第23版)

当法人は当業務日誌で発信した情報について正確な情報をお伝えするように努力をしますが、誤り・正確さ・取引の正当性などについては、当法人およびその情報提供者は一切の責任を負いません。

記事を読まれた方又は第三者が当該業務日誌に記載されている情報などに基づいて被ったとされるいかなる損害についても、当法人およびその情報提供者は損害賠償その他一切の責任を負担致しません。

記事の内容についてのご質問はお問い合わせのページよりお願いいたします。

ご質問の内容によっては有料でのご対応、もしくはご返答いたしかねる場合がございますので、あらかじめご了承ください。