遺産そのものの分割とそれに代わるもの
遺産分割の方法として、①現物分割、②代償分割、③換価分割、があります。
①以外は、遺産そのものの分割ではなく、それに代わるものです。
①と②の間には対価性・譲渡性の有無という大きな相違があり、譲渡所得課税の有無という相違は②と③の間にあります。
登場人物が相続関係者だけというところが①と②の共通点で、相続持分の譲渡が行われる場合も、遺留分の減殺請求での金銭補償の場合も、登場人物が相続関係者だけだと、対価性・譲渡性の存在の事実は無視されることとされています。
民法改正に伴う新たな対価性・譲渡性
今般の民法相続編の改正で、遺留分減殺請求は、遺留分侵害額請求に改正され、その請求権の行使により生じる権利は金銭債権であるとされました。
例えば、遺留分権の行使に対し、金銭が無いので、その代償として、相続不動産の一部を遺留分権者の名義にすることにして、遺留分問題を解決した、というケースがあったとします。
改正後は、遺留分債務を相続不動産で代物弁済したということになります。
ここでも対価性・譲渡性が確認出来ますが、結果としては、遺産そのものの分割①がなされたに過ぎない状態になります。
ここでの登場人物は相続関係者だけです。
譲渡所得課税は当然か
ところで最近、遺留分権が金銭債権であると法改正されたのだから、物権たる相続不動産の一部を代償としてあてがう様な場合は、ここに代物弁済行為が確認できるので、当然に、譲渡所得課税をすることになる、との情報が流されています。
土地の代償として金銭を渡す(②代償分割)行為と、金銭の代償として土地を渡す(④遺留分侵害額弁済)行為と、どれも遺産分割作業の中での選択行為です。
どちらも代償行為としての譲渡行為が確認されます。
②では相続以外の財産が絡みますが④では相続財産しか登場しません。
それでも、④の場合だけには、譲渡所得課税をする、というのです。
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