平成30年改正で法人税法「22条の2」創設
税理士に「法人税法の中で一番大切な条文は何条?」と聞けば、「22条(各事業年度の所得の金額の計算)」と答える者が圧倒的でしょう。
所得の金額をどのように求めるかという原点となる規定です。
平成30年税制改正では、この条文の次に「22条の2」が追加されます。
これは企業会計において国際会計基準の動向を踏まえて収益認識に係る会計基準が適用されることから、法人税についても「収益認識の金額」「計上時期」の一般的な取扱いを法令上明確にするという趣旨で設けられた収益認識の規定です(この改正にあわせ、返品調整引当金、長期割賦販売等に係る延払基準も順次廃止)。
法人税法「22条」の重要度は後退するか
この条文が追加されても、現行法の考え方が変わった訳ではないので、「22条」の重要性はさほど変わらないと思います。
「旺文社事件」という有名な税務訴訟がありますが、これも「22条」が争点の一つとなっています。
簡単にいうと、100%親子関係のある会社の子会社が著しく低い価額で第三者割当増資を行ったのですが、親会社の有する子会社株式の株価が希薄化し、新株主に経済的価値が移転するので、旧親会社側で「寄附金/収益」で認識されるとして、当局が課税した事案です。
この第三者割当増資が「22条の取引にあたるのか」という点が争われました。
22条の収益の額とは、「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のもの」とされています。
第一審では、増資をめぐる法律行為は「子会社と新株主」間の行為であり、「(旧)親会社と新株主」との間の法律行為(取引)はないので、22条の「取引」に当たらないものとされましたが、最高裁では、旧親会社が増資会社を完全支配してグループ経営しているという特殊性から「無償の取引」に当たると判示しました。
「未実現の利得は課税しない」
「取引」という文言を、私法上の法律行為と考えるのか、会計上の取引(資産・負債・資本の増減原因となる事象)と考えるのかという議論もありますが、最高裁判示はそもそも「未実現の利得を課税対象から除外する」という収益認識の大前提から外れているという指摘もあります。
収益概念が整理されても、ポイントはそこ。
22条から考えないとダメということでしょうかね。
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