海保職員の処分を巡って
昨年の10大ニュースのうち大きな話題の一つに尖閣のビデオ映像流出事件がありました。
この事件は守秘義務違反に当たるかどうかが争点でありましたが、職務上知りえた秘密を漏らしたとされるのかどうかについて、検察は、映像流出後に複製版が国会各派に提出されていたこと、海保職員なら誰でも閲覧できるフォルダーに一時おかれていたこと、過去の起訴例等から映像の機密性は高くなかったと判断し、起訴猶予とされました。
海上保安庁の内部では厳罰を望む政府とそれに反する多くの世論からの擁護の声に挟まれ、処分決定に苦渋したようです。
辞職届は処分の後受理された
当初、海上保安庁は問題の職員から提出された辞職届を受理しませんでした。
この時海上保安庁は懲戒処分を検討しており、辞職届を受理してしまうと退職となり、海上保安庁として懲戒処分ができなくなってしまうからです。(処分しても効力が及ばない。)
懲戒処分は国家公務員の場合、軽い順に、戒告、減給、停職、免職等がありますが、決定した処分は組織の信用を大きく損なわせた影響を重く見て、保安官を停職12カ月としました。
その後、本人からの辞表を受理し、依願退職となりました。
企業に例をとってみると
例えばある会社の従業員が会社に大きな損害を被るような行為を陰で意図的に行っていたとします。
会社がそれを察知し、本人に問いただそうとしていた矢先に、本人から退職届が出されて受理したとします。
会社は、退職届を受理してしまうと、不正に対しての懲戒処分が出来なくなります。
退職金を払わないようにしたくともできなくなってしまいます。(就業規則で退職後の不祥事発覚時の取り決めがあれば、支払いを減らせる場合もあります。)
もちろん、刑事事件として訴え金銭解決をする方法はありますが、会社の懲戒処分は退職後にはできません。
難しい判断ですが、退職届提出が疑わしい場合は受理しない方が良い時もあるでしょう。
しかし一般的な自己都合退職はきちんと退職届を提出してもらう方が労使紛争の未然防止の観点からも必要な事でしょう。

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