(1)そもそもどんなもの?
請負とは、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約束し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して請負人に報酬を支払うことを約束する契約です。
委任とは、当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方(受任者)に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約です。
委任の定義においては、委任の対象となるのは「法律行為」とされていますが、事務処理や管理業務等の法律行為以外の委託も「準委任」と呼ばれ、委任の法律が準用されます。
(2)両者の特徴は
請負は定義のとおり、有償契約であり仕事の成果である目的物が存在します。
報酬の支払い時期は、特約がない限り目的物の引渡と同時に行われます(後払いが原則)。
一方委任は、無償を原則としており、報酬を支払う特約がない限り、受任者は報酬を請求できないこととされています。
(3)似ている点は
両者とも、一方の当事者がもう一方の当事者に何かを依頼する契約です。
また、請負も委任も、当事者の合意があれば契約書を作成しなくても成立する諾成契約です。
(4)印紙税法では大違い
ただし、契約書を作成する場合、印紙税の関係では請負と委任で大きな違いが生じます。
請負契約書は第2号文書として印紙税の課税対象となりますが、委任契約書は印紙税の課税文書には該当しません。
契約書を作成する場合、その契約が請負契約なのか委任契約なのかによって、収入印紙の貼付の要否が異なります。
例えば、税理士とお客様が顧問契約書を作成する場合、税務相談や事務処理を行うことは委任契約となりますので、これを内容とする契約書は印紙税の課税対象にはなりませんが、決算書や申告書の作成に対して報酬を支払う契約は、一般的には請負契約とみなされるため、この内容が記載された契約書は印紙税の課税対象とされます。
この点では、両者を厳密に区分する必要があります。
民法
(請負)
第632条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
(報酬の支払時期)
第633条  報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。
ただし、物の引渡しを要しないときは、第624条第1項の規定を準用する。
(委任)
第643条  委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
(受任者の報酬)
第648条  受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
(準委任)
第656条  この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
印紙税法
(課税物件)
第2条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
印紙税法基本通達
(課税文書の意義)
第2条 法に規定する「課税文書」とは、課税物件表の課税物件欄に掲げる文書により証されるべき事項(以下「課税事項」という。)が記載され、かつ、当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書のうち、法第5条《非課税文書》の規定により印紙税を課さないこととされる文書以外の文書をいう。
(課税文書に該当するかどうかの判断)
第3条 文書が課税文書に該当するかどうかは、文書の全体を一つとして判断するのみでなく、その文書に記載されている個々の内容についても判断するものとし、また、単に文書の名称又は呼称及び形式的な記載文言によることなく、その記載文言の実質的な意義に基づいて判断するものとする。
2 前項における記載文言の実質的な意義の判断は、その文書に記載又は表示されている文言、符号を基として、その文言、符号等を用いることについての関係法律の規定、当事者間における了解、基本契約又は慣習等を加味し、総合的に行うものとする。

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