自己株式の公開買付案内
上場会社の自己株式公開買付案内をみていると、公開買付価格は直近データを参考に決定しているものの、多くの場合1割ぐらいのディスカウント価格に設定しています。
逆に、ディスカウントのない買付価格設定の場合には、公開買付期間の株価が1割ぐらい上昇する傾向にあります。
公開買い付けに対する税法
会計では、公開買付への応募を単なる株式の譲渡としつつ、自己株式の取得は資本出資の反対の行為なので、会社の部分的な清算とも考えます。
税法では、その部分清算だとする考え方を徹底させています。
すなわち、当初出資額を超える回収は清算配当所得、満たない分は清算損失です。
当初出資額を超えた値段で株価を取得していたとすると、その超価額も清算損失です。
公開買い付けに応じた法人の税務
単位当たり公開買付価格が500で、当初出資額が200で、株式簿価が550だとすると、清算配当所得は500-200=300、清算損失は550-200=350です。
配当とされた300は法人税法では50%が益金不算入とされており、清算損失350は単純な損金です。
税負担が40%とすると(350-300×50%)×40%=80の節税になります。
公開買付応募で50損したのに、資金ベースでは80-50=30得したことになります。
公開買付価格が市場価格より割安でも応募者不足とならない理由はここにあります。
公開買い付けに応じた個人の税務
個人の場合は、先の清算配当所得と書いたものについては配当所得課税、清算損失と書いた部分は株式分離所得の譲渡損として扱われ、多くの場合譲渡損は切り捨てとなってしまうので、最高税率課税となる可能性もある配当課税だけが標的にされてしまいます。
これでは、個人の公開買付応募に税制が邪魔していることになるので、単純な株式譲渡と扱うという特別立法があります。
今年9月、12月まで
法人の税務では、今年の10月から、公開買付を予定して取得した株式に係るみなし配当は100%益金算入になり、個人の株式譲渡課税の特別立法は今年いっぱいで廃止となります。

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