鍵の交換は確かに即効的ではあるが・・・
不動産の賃貸経営で避けられないのは、借主の賃料滞納と明渡しの問題です。
長期間にわたり賃料を滞納する借主に対しては、賃貸借契約を解除の上、明渡請求をなし、それでも応じなければ裁判を起こすことになろうことは、大方察しがつくことでしょう。
しかし、建物賃貸借について、より手っ取り早い方法として、こちらで鍵を替えて、借主を締め出す方法を聞いたことがある、あるいは、現にやったことがあるという方もおられるかもしれません。
自力救済の禁止
しかし、これは、法治国家である我が国では問題ありと言わざるを得ません。
すなわち、自力救済禁止の原則から、仮に自らの権利が侵害されても、その回復は、自らの実力行使ではなく、司法手続に委ねて図らねばならないとされております。
もっとも、かつては、借主は賃料を滞納している手前、それを問題だとして訴えることはなかったかも知れません。
しかし、今日の権利意識の高まりの表れとして、このような手法を問題視し、司法の場で責任追及する事例が出てきました。
損害賠償の対象に
そして、本件建物内の動産類の撤去の機会を与えず、明渡しの要否について判断ができず、鍵の交換を承諾又は容認したとは認められない事情の下でなされた鍵の交換について、借主の占有権を侵害する自力救済で、違法であるとして不法行為が成立し、貸主の損害賠償責任を認めるという裁判例が出されました。
刑事罰の対象になりうる
また、家賃債務の保証業者による悪質な取立てによる弊害を背景に、これを刑事罰で取り締まろうという動きも出てきました。
すなわち、借主に無断で鍵を換えて部屋に入れなくしたり、深夜や早朝に家を訪れて督促したりすること等の行為を禁止し、これに違反すれば2年以下の懲役または300万円以下の罰金を科し、悪質な事例には両方を科すという厳しい内容の法案が今国会で提出されました。
このような現状からすれば、鍵の交換という手段はもはや禁じ手と心得るべきです。

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