転嫁対策措置法で禁止される転嫁拒否行為
消費税転嫁対策特別措置法では、消費税の適正な転嫁を確保するために、取引の力関係を背景とした一定の転嫁拒否行為を禁止しています。
禁止されている転嫁拒否行為は、買手(特定事業者)が売手(特定供給業者)に対して行う
①買いたたき
②減額
③商品購入、役務利用または利益提供の要請
④本体価格(税抜き)での交渉拒否
⑤報復行為
ですが、消費税率が8%に改定された直後における、これらの行為の実態が少しずつ報告されています。
指導実績は「買いたたき」が多いが…
転嫁拒否の是正勧告・指導を行う立場である公正取引委員会からは「転嫁拒否行為に対する対応実績」が公表されています。
この「対応実績」では、H26.5までの指導実績の多い転嫁拒否行為は、
①買いたたき76.8%
②本体価格での交渉拒否18.8%
③商品購入、役務利用または利益提供の要請4.1%
④減額0.3%
の順となっています。
この時点までに勧告まで至った事例(1件)も「買いたたき」によるものでした。
一方、経済産業省「消費税の転嫁状況に関する月次モニタリング調査」では、事業者側に聴取したアンケート結果が報告されています。
5月次の調査結果によれば、「実際に転嫁拒否行為を受けた」と回答した事業者は106社あり、こちらでは
①減額56.6%
②買いたたき23.6%
③本体価格での交渉拒否21.7%
④商品購入、役務利用または利益提供の要請6.6%
の順となりました。
こちらは、「減額」が「買いたたき」より多いという結果でしたが、下請法の取締状況(H24中小企業庁)という別の調査でも、
①「減額」34.0%に対して、②「買いたたき」は3.4%となっています。
「買いたたき」と「減額」の違い
「買いたたき」と「減額」は、どちらも正当な理由がなく、買手側から売手側に取引価格を低くしようとする働きかけですが、前者が「契約前の交渉段階」で行われるものであるのに対し、後者が「事後的」に行われるものと、行為を認識する時点が異なります。
公取委等の転嫁拒否行為の指導は税率改定前(H26.3以前)から既に行われているので「買いたたき」の対応例が多かったのでしょう。
今後は「減額」の指導・勧告事例も増えてくるかもしれません。

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