厚労省の24年度税制改正要望で
厚労省は、重点項目の一つとして「社会診療報酬等に係る消費税のあり方の検討」を要望しました。
これは、医療機関の仕入れに係る消費税(仮払消費税)のうち、社会保険診療に係るものは非課税用課税仕入れとなるため、この分の仕入税額控除ができず、消費者ではなく、事業者が負担する消費税、いわゆる“損税”の問題が生じているからです。
非課税はありがた迷惑
消費税は、消費者の手に届く前の長い過程ですでに事業者によって仮に納められ、前段階消費税として累積されています。
そして、最終消費者の負担する消費税額が国に収納される際に控除されることによって、重複収納にならないようになっています。
この重複収納排除をしないと、消費者が負担しなかった消費税が国に収納されたままになり、国の消費税収入の総額は課税物件にかかる消費税、すなわち消費者の負担した消費税総額を超えることになります。
非課税売上と言えども、事業者は最終消費者ではないので、前段階消費税を負担すべきいわれはありません。
事業者は消費税をただ預かって国に納付するだけの法的社会的責任を持つに過ぎないからです。
医師会だけではない
厚労省の要望は、医師会の要望を承けて採り上げたものですが、非課税のありがた迷惑は医師会に限られません。
介護サービスや住宅貸付ほか多くの非課税事業者全体に共通する問題です。
消費税増税のため今後食品に係る消費税が非課税化されることになどなったら、この問題は限りなく広範なものになり、国の重複収納額も巨大なものになります。
食品非課税による税収減の9割以上が確実に重複収納されたままになります。
非課税は値上げに通じる
厚労省と医師会のねらいは、もしかすると、近未来の消費税率改定に照準を定め、診療報酬点数や薬価基準のアップを確保するためなのかもしれません。
いわゆる、自己負担増となる前段階消費税を消費者に価格転嫁する戦略です。
しかし、他の中小零細の非課税事業者はそのような仕入税額控除不適用分を売上代金に転嫁できる制度的恩恵を受けることなく、泣き寝入りしているだけです。

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