「法令用語」は日常会話と異なる
税理士という職業柄、税法など法律の条文にはよく目を通します。
そこで目にする法律の中には、日常生活では特に意味の違いがないような言葉でも、立法技術上、特有の意味で使われている言葉があります。
このような「法令用語」の特有の意味を厳密に理解できなければ、法令解釈は難しくなります。
「その他の」と「その他」は意味が違う?!
その一例を紹介すると法令用語としての「その他の」と「その他」では意味が異なります。
どちらも、その直前にある語の例示として、より広い意味の語を引き出す言葉ではありますが、法令用語の「その他の」は「包括的例示」、「その他」は「並列的例示」と呼ばれ、使い分けがされています。
「その他の」の場合は、直前に置かれた名詞が後に続く内容の広い言葉の一部をなすものとして、その中に含まれる場合に用いられます。
「例示の『の』」と呼ばれることもあります。
例えば「佐藤さんその他の社員」という場合には、「佐藤さん」は「その他の社員」に含まれます(包括的例示)。
一方、「その他」の場合は、その語の前後の語句は独立していて,後に続く語とは別個の概念として並列的に並べる場合に用いられます。
「佐藤さんその他社員」という場合には、「佐藤さん」と「その他社員」は別個の概念なのです(並列的例示)。
前者の場合、「佐藤さん」は一応「社員」の一員であることは間違いありませんが、後者の場合、ひょっとしたら「佐藤さん」は「社員」ですらないかもしれませんね。
「その他の」「その他」ばかりの条文は…
税法の中でも「その他の」「その他」がよく使われる条文は厄介です。
たとえば租税特別措置法では「交際費」とは
①交際費、接待費、機密費その他の費用で
②法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する
③接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの
と規定されています。
交際費等を包括する「その他の費用」は何なのか、得意先等と並列例示される「その他事業の関係がある者」、接待等と並列例示される「その他これらに類する行為」は何なのかなどと考えながら、条文を読んでいるわけです。

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