減価償却資産を期中に売却や除却をした場合に、期首から売却等直前までの期間の償却費を計上すべきかどうか、気になるところですが、実務上の取扱いとしては任意のようです。
税法の規定
減価償却費の計上について、法人税では「各事業年度終了の時において有する減価償却資産」について損金経理の上、計上できる旨の規定になっています。
一方、所得税においても、「その年の12月31日において有する減価償却資産」について計上できる旨の規定になっています。
税法規定からいえば、別段の定めがない限り、原則、期中売却等をした償却資産については減価償却費の計上は許されず、期首帳簿価額が売却(譲渡)原価となり売却価額との差が売却損益として計上され、また、除却の場合は期首帳簿価額が除却損として計上されることになります。
所得税には通達
しかし、所得税においては、通達により、便宜的に、年初から売却直前までの減価償却費の計上を認めています。
具体的には、年償却費の月数案分です。一方、法人税にはそのような通達はありません。
所得税においては、期中償却の有無によって、譲渡所得の金額、不動産所得、事業所得の金額が違ってきますが、法人税の場合は、所得区分による課税方式ではなくグロス課税ですので、期中償却費を計上しようがしまいが課税所得には影響がないことから、敢えて通達にも規定しなかったのではないのでしようか。
法人税申告書別表16の記載
法令上はともかく、実務上は任意ということですが、法人税の申告書別表16(減価償却資産の償却額の計算に関する明細書)では、事業年度末に存在しない資産の償却費は反映されない仕組みになっています。
やはり、事業年度末に存する資産についてのみ償却費を計上する、という法の趣旨がこの別表16に表れているように思います。
適格分割等の組織再編
適格分割等(適格現物出資、残余財産の全部の分配を除く適格現物分配)の場合には、「期中損金経理」という規定の仕方で期中償却費の計上を認めています。
しかし、その償却限度額は、年償却費の月数案分ではなく、事業年度が1年に満たない場合の償却率によることになっています。
 

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