近年の不況に加えて、大震災の影響で「採用内定取り消し」が社会的問題になっています。
この問題を企業の立場から考察します。
採用内定とは
一般に「採用内定者」と言われているのは次の2種類に分けられます。
(1)「採用予定者」
労働契約が締結されていない、単に「内定通知」が行われている場合でその取り消しは「解雇」に当たらない。
(2)「採用決定者」
労働契約が締結されているが、一般には「学校卒業」などが条件となっている場合で、その取り消しは民法上の「解雇」に当たる。
この区分によって内定取り消しを行う場合の取り扱いが異なります。
採用内定取り消しの有効性
「採用予定者」であっても企業と本人の間では、民法上、それに基づく法律関係と信頼利益が生じていますから、企業側が一方的に破棄する場合には「相当な理由」が必要になります。
「採用決定者」の場合は通常「学校を卒業出来ない場合、所定の資格を取得できない場合、健康異常が起きた場合」等の「解約権を留保した労働契約」で、それらの不適格性は内定取り消しの正当な理由として認められます。
事業縮小などを理由とする内定取り消し
不況や震災の影響で事業の縮小などを余儀なくされた場合の取り消しは「採用決定時には予見できなかったし、予見できなかったことに過失がない。」とされれば「事情変更の原則」が適用され、「相当な事由」とされます。
経営者の留意点
やむなく「内定取り消し」に至った場合でも、業績の回復・事業継続・再成長を目指す以上、企業の将来を担う若い人材の確保は重要であり、本人の同意を得た解約、採用時期の延期等、円満な解決が望ましいといえます。
また、採用内定者以外の雇用調整の余地がある場合は、若い採用内定人材の将来性を考慮して、パートタイマーの整理・熟練技術の必要がない限り定年後再雇用者の整理、希望退職を内定取り消し前に考慮すると良いでしょう。
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