株券とは、「株式」すなわち「株主の地位」を表彰する有価証券です。
具体的には、利益配当請求権、議決権等の株主権利を表彰しており、これらの権利の行使及び譲渡には株券が必要でした。
それ故、平成16年旧商法改正前までは、原則すべての会社について株券の発行が強制されていました。
その後旧商法も変遷を重ね、新会社法では、株券不発行が原則となりました。
そして平成21年1月には、株券発行・管理に伴うコスト削減を主な理由として、上場株式は一斉に電子化(ぺーパーレス化)されることなり、現在その準備が進められています。
(1)電子化後の株主の権利行使
電子化になると上場会社の株券(紙)はすべて無効になります。
そして株主の権利(譲渡も含む)は、すべて金融機関の口座を通じて電子的に管理されることになります。
手続的には、証券会社を通じて証券保管振替機構(以下「保振」)に預託することで電子化され、その後も証券会社の口座にて管理されます。
具体的には、
①預託された株券は「保振」で集中保管・管理され、
②株券の譲渡・決済は口座振替で、
③名義書換等の手続は不要、
④株式分割後もすぐに売却ができるなど、電子化後もすぐに取引が可能です。
(2)保振に預託していない株主の権利
電子化移行日までに株券を「保振」に預託していない株主の権利は、発行会社が信託銀行等に開設する「特別口座」によって確保されます。
特別口座では、配当・議決権等の権利行使及び単位未満株式の買取り請求などを行なうことはできますが、株式の売買等はできません。
また、複数銘柄を所有している株主は、発行会社ごとに特別口座が開設されるため、相続・贈与等の手続きの際には、口座管理機関(信託銀行等)ごとの手続きが必要となり面倒です。
(3)本人名義でないタンス株主の権利
電子化後は、他人の名義の特別口座で管理されることになります。具体的には、株主名簿上の株主が真実の株主として権利行使及び配当等を受領します。
したがって真実の所有者は、そのことを証する資料(取引の明細等)を提示しない限り、株主としての権利を失う可能性がありますので、電子化前に必ず名義書換を行なって下さい。
Ⅰ.証券保管振替機構のHP
http://www.jasdec.com/issue/index.html
 機構のHPでは、
①電子化後の株券はどうなるのか、
②株券が見当たらないときはどうするのか、
③非上場会社の株はどうなるのか、
④単元未満株はどうなるのか、
⑤従業員持株会に入っている株券はどうなるのか、
⑥銀行の担保に入っている株券はどうなるのか等、電子化に関するQ&Aが掲載されています。
 また、具体的な手続き及びそのメリットも掲載されています。
Ⅱ.金融庁のHP
http://www.fsa.go.jp/ordinary/kabuken/index.html
 金融庁のHPも、「機構のHP」とほぼ同様な内容です。
Ⅲ.株式の移転(現行制度「電子化前」)
(1)株券不発行会社の場合
イ.原則
 意思表示で株主の権利が移転し、株主名簿の名義書換を第三者対抗要件とします。(会社法130条第1項)
ロ.振替株式
 振替機関・口座管理機関の備える振替口座簿上の振替によって権利が移転します。(社振等振替法140条)
(2)株券発行会社の場合
イ.株券等保管振替制度の預託株券
 振替が株券の交付とみなされます(保振法第27条第2項)。
 預託株券については、株主名簿に保官振替機関の名義が記載され、その分については、会社別途実質株主通知に基づき、実質株主名簿を作成します。
ロ.上記イ以外の株式
 株券の交付により権利が移転します(会社法128条第1項)。株主名簿が対会社対抗要件となります。

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