功績倍率法が普遍的
役員退職金について、法人税法では「不相当に高額」な部分を損金不算入としています。
いわゆる過大役員退職金問題です。
役員退職金をいくらにすればよいかの話題のときの適正額の限度基準としては一般に功績倍率法が多く採用されています。
功績倍率法は、「役員の最終月額給与×勤続年数×功績倍率」の算式で表現されます。
功績倍率の無難値
この算式の中で、最も争いの種になるのが「功績倍率」の部分ですが、代表取締役社長の退任については一般に「3倍」を採用すれば無難と解されています。
「3倍」を無難とする法律や通達の根拠はないのですが、判決の積み重ねの中で基準値として確立してきたものと言えます。
モデル判決
最も基準とされる判決は昭和55年5月26日の東京地裁判決です。
この訴訟で被告税務署長は「全上場1603社の実態調査の結果から算出される功績倍率の平均が社長3.0、専務2.4、常務2.2、平取締役1.8、監査役1.6」であると主張し、これが高裁、最高裁の判決においても採用されて、以後の税務行政に影響を与えてきました。
それでも異なる個別事案判決
とは言え、その後の判決の中でも、昭和63年9月30日の静岡地裁判決は功績倍率2.2を採用し、平成19年11月15日の国税不服審判所の裁決では1.9を採用していますので、功績倍率3.0が必ずしも安全値と言えるわけではありません。
逆に、昭和51年5月26日の東京地裁判決では7.5、最近でも平成16年6月15日の国税不服審判所の裁決では4.7を採用するなどのケースもあります。
スジ論と形式論
本来、役員退職金をいくら支払うかは、会社が主体的に判断することで、他に基準を求める話ではないともいえ、会社への貢献の度合いを分析的に明らかにし、資料的に整えることを通じて、算定することが重要です。
そうではあるものの、事前に功績倍率法の各算定項目事項を整備し、功績倍率「3」を採用しておくことが、役員退職金の金額妥当性の税務調査時の説明上、有効性を確かに持っているように感じられる所です。
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