仕事の関係で長く海外に赴任している場合、現地で居住用の家屋及や土地等(以下「居住用財産」といいます。)を購入し、そして、日本に帰国の際には、当該居住用財産を処分してくるのが一般的なようです。
日本からみれば、当該居住用財産は国外財産で譲渡人はこの段階では非居住者ですから、日本での課税関係は生じません。
しかし、「現地で売買契約だけを済ませ、日本に帰国してから引渡す」といったケースでは、日本での課税はどうなるでしょうか。
居住用財産の特別控除の適用可否
日本に帰国すれば、譲渡人は居住者となります。
居住者は、国外財産であっても、その譲渡による所得が発生すれば、当然に課税義務を負います。
国外居住用財産の譲渡の場合、「居住用財産の譲渡所得の特別控除(限度3,000万円)」の適用が受けられます。
理由は、「条文の定めに、居住用財産の所在地に関する制限規定がない」からです。
居住用財産の長期譲渡所得の課税の特例は?
10年超保有の居住用財産を譲渡し、その所得が6,000万円以下であれば10%の軽課、6,000万円を超える部分には15%の税率が適用されます。
この軽課特例は、国外の居住用財産の譲渡による所得には適用されません。
条文において、「当該個人がその居住の用に供している家屋で政令で定めるもののうち国内にあるもの」と限定していることが根拠となります。
結論としては、国外居住用財産の譲渡による所得には特別控除の適用は可能ですが、長期譲渡の軽課税の特例は適用ないということになります。
租税条約との関係
多くの国では、譲渡人が非居住者であっても、自国内にある不動産を譲渡したことによる所得には課税しています。
租税条約があっても、原則として、課税の免除及び軽減はありません。
外国で課された税金は、日本での税金から控除できますが、日本での税金がない場合や日本の税金以上の外国での税金を取り戻すことはできません。
したがって、日本に帰国する際には、国外不動産は処分し、できるだけ複雑な課税関係は避ける方が望ましいのではないかと思います。
  

当法人は当業務日誌で発信した情報について正確な情報をお伝えするように努力をしますが、誤り・正確さ・取引の正当性などについては、当法人およびその情報提供者は一切の責任を負いません。

記事を読まれた方又は第三者が当該業務日誌に記載されている情報などに基づいて被ったとされるいかなる損害についても、当法人およびその情報提供者は損害賠償その他一切の責任を負担致しません。

記事の内容についてのご質問はお問い合わせのページよりお願いいたします。

ご質問の内容によっては有料でのご対応、もしくはご返答いたしかねる場合がございますので、あらかじめご了承ください。