公租公課の負担条項
不動産の売買契約書には、固定資産税と都市計画税について、日割り計算で所有者期間に応じて負担しあう旨あらかじめ印刷されています。
不動産を所有することによる自治体の行政サービスへの応益負担費用としての公租公課は資産の所有・使用・収益する期間に対応させて按分するべきだからです。
税務署の捉え方
ところが、税務当局はこの按分された税金を不動産の売買価格の追加払いとみなします。
固定資産税等は1月1日所有者に課税され、その日後に所有者の異動が生じても納税義務に変動が生じるものではないので、買主負担額は固定資産税等そのものではなく、取引代金の一部にすぎない、という極めて形式論の理由からです。
この見解は以前から当局の代弁者から開示されており、平成7年に消費税基本通達が出されるに際しては、それが通達に記載されました。
その後平成13年、14年の国税不服審判所の裁決でこの見解が支持されるに及び、当局監修の質疑応答集に全税目を通した見解として掲載されました。
そして、税実務上のこれへのチェックが厳しくなってきました。
民間サイドからの疑問
この税務当局の解釈に対して、民間サイドでは大勢的には順応でありながらも、これを疑問とする意見も根強くありました。
支払い済みの固定資産税等の未経過分を回収しただけの収入に利益(所得)は存しないからです。
年末年始日譲渡だと固定資産税等の按分はないのに、1月2日譲渡の場合は1年分の固定資産税等の負担替えがあり、これを譲渡代金とすると、不動産価格が年始の2日に騰貴したことと理解するしかありません。
これは不合理なことです。
裁判所の先例をみると
昭和47年の最高裁判決は、所有権の異動に伴い固定資産税等の負担の変更をするのが本来で、そうしないのは地方税法の課税技術上の都合に過ぎず、買主が負担を免れるとすれば不当利得であるから、当事者間で精算をするべきである、としています。これは民民の事件でした。
公租公課の負担精算を譲渡収入として課税する不合理はいずれ税金裁判の場で争うテーマになりそうです。

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