司法書士の取引立合い
税理士も時には不動産取引の契約決済の場面に立ち合うことを依頼されることがありますが、司法書士さんの場合はそれが本来の業務です。
司法書士として不動産取引に立ち合うことは、その取引の信頼性を保証するような役回りを引き受けることになります。
取引当事者はそれで安心できますが、ほとんど立合料という特別の報酬を受け取っていないにもかかわらず、すごく大きなリスクを負っているわけです。
当事者に悪意があるとき
善意の当事者だけならリスクは少ないでしょうが、詐欺師のような人を相手にしたとなると、責任重大です。
土地所有者になりすました人物との間で売買契約を締結し、売買代金を騙し取られた当事者が、土地所有者と称した相手側について本人確認作業をした司法書士及び司法書士法人に対し、本人確認を誤った過失があると主張して、損害賠償を求めたという事件があります。
司法書士の過失と損害額
司法書士は、「相手が真正な不動産所有者であることを確認すべきであるにもかかわらず、偽造の運転免許証をつぶさに検証することなく安易に信用し、売買代金を騙し取られる原因を作った」と主張されました。
売買代金は2億円で登録免許税は262万円でした。
判決による損害賠償額
判決は、原告の側にも過失があったとして過失相殺2割を減じた1億6千万円余の損害賠償義務を負うとしました。
司法書士には運転免許証が偽造であるかどうかを見抜く専門的能力はないのであるから、過大な要求であるなどと反論していましたが、認められませんでした。
裁判は高裁に控訴されています。
税理士の場合にも
平成の時代になってから、税理士への損害賠償請求訴訟も起こされるようになってきており、過去に「買換え特例を適用した事実があるかないかについて税務署に問い合わせる義務がある」とされた判決や、相続税の納付についての物納手続きの依頼を延納手続きにしてしまった事案で2億8千万円余の損害賠償義務を課せられた判決があります。
専門家の責任は重くなっています。
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