禁止の特約がなければ自由
本来、借地権者がその所有する建物を増改築することは自由です。
しかしながら、増改築を禁ずる特約を設けることは有効であり、その特約がある場合には、地主の承諾を得るか、裁判所より承諾に代わる許可を受ける必要があります。
ちなみに、増改築禁止特約がない場合でも地主が承諾料をとったり、承諾増改築を理由に契約解除を主張する例もありますが、これは法律に対する誤解です。
「増改築」と「修繕」
ここで、増改築と異なる概念として「修繕」が問題となります。
借地権者としては、建物にガタがきたときに修繕したくとも、地主に「それは増改築だ、まかりならん」と言われては困るわけです。
この点、修繕とは、目的物の完全な使用収益を妨げる障碍を除去し、完全な使用収益ができるように従前の状態とほぼ同じ状態にすることといえます。
例えば、屋根瓦が破損して雨漏りがする場合に、その破損した瓦を破損していない瓦と取り替える行為がこれにあたります。
そのような借地上の建物の維持、保存を図る通常の修繕を禁ずることは特約をもってしてもできないと解されています。
これに対し、通常の修繕を超えた大修繕、つまり、壁、柱、床、梁、屋根又は階段の過半にわたる修繕、建物の耐用年数に大きな影響を及ぼす程の規模の修繕は、これはもはや増改築の域に達しており、これを無断で行うことを禁ずることは許されます。
増改築の許可申立の裁判
借地権者が増改築の許可を裁判所に求めるためには、図面又は仕様書等によって求める工事を特定して申立て、増改築をすることが通常の利用上相当であることを具体的に主張、立証することが必要です。
それで裁判所が申立を相当と認めたときには、一定の金額の支払を条件に増改築の許可を出します。
東京地裁における相場としては全面改築で更地価格の3%程度と言われています。
承諾がなくても、解除されるとは限らない
地主の承諾も裁判所の許可なくなされた増改築は契約違反で契約解除事由となります。
もっとも、裁判所は、通常の土地の利用上相当で、地主に特段影響を及ぼさず、信頼関係を破壊するようなものでない場合は、解除を認めていません。

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