個人株主が破産した場合の自己株式取得
平成26年3月14日付の東京国税局の文書回答事例の中で「個人株主が破産した場合に、会社がその自社株式を破産財団から買取った場合には、源泉徴収はしなくても構いませんよね?」という照会がありました。
この事前照会によると、照会者である会社(当社)の取締役が裁判所から破産手続開始の決定を受けてしまい、当社の株式がその破産財団に組み込まれてしまったとようです。
当社は非上場であるため、破産財団側としても市場で売却するなどの処分もできず、当社が時価による自己株式の買取りに応じた―ということでした。
通常の非上場の自己株式取得なら源泉徴収
通常、非上場会社が自己株式を取得した場合では、その自己株式の取得により交付を受ける金銭等の額が当社の資本金等の額(基因となった株式に対応する部分)を超えるときには、その超える部分が「みなし配当」とされ、所得税法では配当所得、「みなし配当」以外の部分が株式等に係る譲渡所得となります。
当社の立場から言えば、この「みなし配当」について源泉徴収義務が生じるということになります。
強制換価手続きによる非課税規定の射程
所得税法には「資力を喪失して債務を弁済する能力が著しく困難な場合における強制換価手続きによる資産の譲渡による所得」は非課税とする規定があります。
そこで、照会者は、当社の事案がこれに該当しますよね?と事前照会をしたわけです。
一見、この自己株式の取引は、取締役が財産の管理処分権を失ったことにより株式を組み入れた「破産財団」と「当社」の取引なので、資力を喪失した取締役(個人)の取引には見えません。
従って、取締役の資力喪失を要件とした非課税の適用は難しいように見えますが、法律上はこの時点で取締役は財産の管理処分権を喪失していても、所有権までは喪失していない状態―つまり、取締役個人がまだ取引の当事者という位置付けなのです。
また、この非課税規定の「資産の譲渡による所得」を聞くと、「譲渡所得」が連想されますが、強制換価による譲渡を原因とする所得を意味するため、「配当所得」でも非課税であると判断されました。

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