争えないという理由
「修正申告をすると争えない」と言われることが多いのですが、それは修正申告が「自らその税額を確定する行為だから」ということに由来するものではありません。
当初申告をして、さらに修正申告をして、その後、減額更正の請求をして、税務署長により減額更正処分が拒否されたら、当然に争えます。
「争えない」と一般に言われる理由は、更正の請求に期間制限があり、期間が経過してしまっていることが多いからです。
不条理の制度欠陥の典型例
所得税や法人税の事案で、買い換え等をめぐり修正申告が義務付けられていて、これを故意に過怠すると「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金」に処されることになります。
もし、税務係争中だったら、修正申告書を提出すると、係争の対象の申告や処分が修正申告に吸収され消滅し、「訴えの利益」がないとして原告適格を喪失し、争う資格を失います。
ただし、修正申告後直ちに更正の請求を出せる期間的余裕があれば、振り出しには戻りますが、争いを続けることはできます。
場合によっては、裁判所の指揮の下での審理の併合や訴えの変更が可能かもしれません。
しかし、大抵の場合は、罰を受けたくないとして修正申告書を提出したが最後、更正の請求のできる期間はとっくに経過していて、係争の継続は不可能ということになります。
23年12月改正による解決
12月2日公布の改正税法によると、更正の請求期間は5年(贈与税及び移転価格税制に係る法人税については6年、法人税の純損失等の金額に係るものは9年)に延長されました。
改正前の期間制限は1年でした。この圧倒的な短さが、「修正申告をすると争えない」ことの元凶だったのですが、5年に延びたことにより、争いの継続・開始が実質的に可能になりました。
相続の分割の確定により、相続税の修正申告・更正の請求をすることになる場合も、当局と係争中の場合には不条理な結末をもたらしていました。
ウッカリ修正での悲劇のドラマもありました。これらの不条理・悲劇も12月改正で相当程度に解決されたと言えます。

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